【4月11日 AFP】
中国最長の川、長江(揚子江、Yangtze River)に生息する絶滅危惧種のスナメリについて、
大規模なゲノム(全遺伝情報)分析を行った結果、独立した種であることが判明したとの研究結果が10日、発表された。

 長江のスナメリは世界のスナメリの中で唯一、淡水に生息する種。イルカに似ているが背びれがなく、
鼻先は平らで丸く、人間が笑っているような表情を常にたたえている。
中国では「川のブタ」を意味する「江豚」とも呼ばれている。
野生に残存する個体は約1000頭のみとなっており、生息数は毎年14%の割合で減少している。
自然保護活動家らは長江でヨウスコウカワイルカ(バイジ)に続いて、
スナメリが絶滅に至る日もそう遠くはないと警告している。

 希少種保護の努力を促進する目的で行われた今回の最新研究で、
国際研究チームは長江のスナメリのゲノムを分析し、別の地域に生息するスナメリ48頭と比較した。

 英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に掲載された研究論文によると、
これらの比較の結果、長江のスナメリは「独立した」種で、
「他のスナメリ群とは遺伝子的に隔絶している」ことが明らかになったという。

 スナメリはこれまで、3つの亜種を持つ単一種として分類され、淡水の長江の個体群はこの亜種の1つとされていた。
しかし今回の論文によると、スナメリを構成するこれら3つの主要グループは、
実際には「数千年もの間、遺伝子流動を共有していない」ことが最新データで明らかになったという。
さらに3つのグループはそれぞれ「異なる環境への遺伝的適応に関して、独自の個別化した特徴」を示しているという。

 自然界では異種間の交配で生まれる子孫には繁殖力がほとんどない。一方、亜種間の交配にはそのような障壁が存在しない。

■「破壊を阻止」

 研究チームによると、すべてのスナメリは海に生息していた単一の祖先を起源とするという。
長江のグループは約4万年前〜5000年前、海水に生息する近縁種から分岐し「新たな環境に急速に適応」した。
そのためには、遺伝子の変化が必要だった。

 研究チームは、腎臓の機能や血中の水分と塩分のバランスなどを調節する遺伝子に変化が生じたことを示す証拠を発見した。

 長江のスナメリは、淡水に生息するための遺伝的適応の「独自で個別化した」特徴を有していると、
研究チームは指摘している。「長江個体群の独特の遺伝子構成を示している今回の遺伝子データにより、
生息地破壊を阻止するための現在進行中の取り組みに拍車がかかることを、論文の執筆者らは期待している」と掲載誌の論文要旨は述べている。

 長江のスナメリは、国際自然保護連合(IUCN)の「レッドリスト(Red List、絶滅危惧種リスト)」で
絶滅危惧種に分類されている。最も大きな脅威は、川辺の産業からの汚染、船との衝突、
刺し網などの漁具にかかることなどとされている。(c)AFP

画像:中国最長の川、長江(揚子江)に生息する絶滅危惧種のスナメリ。
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AFP
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