【2月22日 AFP】
アマチュア天文家のビクトル・ブーゾ(Victor Buso)さんは適切な時に適切な場所にいた
──それは天体観測史上、最大級の控えめな表現かもしれない。

 南米アルゼンチンのロサリオ(Rosario)出身のブーゾさんは、きらめく閃光(せんこう)を放って爆発し、
超新星に姿を変える恒星の観測史上初となる「ビフォーアフター」のイメージを偶然撮影することに成功したのだ。

 天文学者らはこの極めて重要な瞬間を「ショックブレイクアウト」と呼び、
星がこのように大変貌を遂げる様子をリアルタイムで目撃することを長年夢見てきた。

 英科学誌ネイチャー(Nature)に掲載されたブーゾ氏の発見を報告する論文の主執筆者で、
アルゼンチンのラプラタ天体物理研究所(Institute of Astrophysics La Plata)の科学者のメリーナ・ベルステン(Melina Bersten)氏によると、
この瞬間に偶然遭遇する確率は1億分の1以下だという。

 論文の共同執筆者で、
米カリフォルニア大学バークレー校(University of California, Berkeley)の
天文学者のアレックス・フィリッペンコ(Alex Filippenko)氏は「宇宙の宝くじに当たるようなものだよ」と冗談を飛ばした。

 2016年9月、新しいカメラを口径40センチの天体望遠鏡に取り付けてテストを行っていたブーゾ氏は、
撮影した画像の中の1枚に、南天の星座ちょうこくしつ座(Sculptor)の方向に明るい閃光が写っているのに気が付いた。

 この恒星を宿している銀河は約8000万光年の距離にある。
超新星爆発で放たれた光が地球に到達するのにも約8000万年かかったことになる。

 事の重大さを察したブーゾ氏は、ベルステン氏に連絡。
ベルステン氏は、このアマチュア天体観測愛好家がダイヤモンドの原石を発見したことを即座に理解した。

■爆発の瞬間からのみ得られる情報

 ベルステン氏が天文学者の国際グループに通知したところ、
数時間のうちに世界中の第一線の望遠鏡が「SN 2016gkg」と新たに命名された超新星に向けられた。

 観測データは、破壊的な崩壊に至る直前の恒星の物理的構造や、
爆発自体の性質などに関する重要な手がかりを提供するものだ。
米カリフォルニア州にあるリック天文台(Lick Observatory)でフォローアップ観測を行ったフィリッペンコ氏は
「爆発を始める瞬間の恒星を観測することで得られる情報は、それ以外の方法で直接的に入手することは不可能だ」と説明した。

 爆発現象の分析から、SN 2016gkgはIIb型超新星であることが判明。
このタイプの超新星は、爆発するまでに水素の外層の大半を失った大質量星で発生する。
IIb型超新星は、1987年にフィリッペンコ氏が初めて同定した。

 研究チームは観測データと理論モデルを組み合わせて、爆発を起こした恒星の元々の質量を太陽質量の約20倍と推定した。
だが、この恒星は爆発した時点で質量の4分の3を失っていた。失われた質量は連星系の伴星に吸収された可能性が高い。(c)AFP

画像:ブーゾさんが捉えた超新星のイメージ。Nature提供(2018年2月21日提供)。
http://afpbb.ismcdn.jp/mwimgs/b/4/700x460/img_b4d1acade31ca00654827dfde1a03064259388.jpg

AFP
http://www.afpbb.com/articles/-/3163560