夜中に眠りから目覚めると自分の体の上に何かが乗っている……という「インキュバス現象」は世界各国で何千年も前から言い伝えられているものですが、
現代ではインキュバス現象が起こるかの科学的な説明も行われています。
さらに、合計1800人を被験者とした13の過去論文をメタ分析した新たな研究で、
このインキュバス現象が現代では珍しいものではないこと、そして精神疾患など不安レベルとの関連があることが示されました。

Frontiers | Prevalence Rates of the Incubus Phenomenon: A Systematic Review and Meta-Analysis | Psychiatry
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fpsyt.2017.00253/full

The Demon Attacks at Night: Explaining the Incubus Phenomenon
https://www.livescience.com/61227-incubus-phenomenon.html

19世紀の画家ヨハン・ハインリヒ・フュースリーによって描かれた「夢魔」では、眠る女性の体の上に悪魔が乗っています。
夢魔のうち男性型のものをインキュバス、女性型のものをサキュバスと呼び、
古くは紀元前2400年のメソポタミアの記録にも言及があるとのこと。
この夢魔や悪魔から眠っている間に攻撃を受けたような経験をすることを「インキュバス現象」と呼びます。

多くの場合、インキュバス現象は睡眠麻痺(金縛り)の延長線として発生します。
メタ分析によるとインキュバス現象よりも金縛りを経験している人の方が多く存在し、この原因は睡眠相の乖離だと言われています。
レム睡眠時に人は夢を見て、体はリラックスし「麻痺」と言われる状態にまでなっていますが、
この時に意識だけを取り戻すと体は麻痺状態のままなので動けません。
「体が麻痺している」という状態に危機を感じた脳は警戒モードに入り「胸に何かが乗っている」という幻覚を作り出すのだと
論文著者でありレイデン大学の臨床精神病理学教授であるJan Dirk Blom氏は語りました。
つまり、金縛りにあっている人が経験しているのは「実際の状況」と「現実に投影された悪夢」のコンビネーションであるわけです。

新たな研究でBlom氏らはインキュバス現象について研究した13の論文のメタ分析を実施。
研究に参加した被験者の合計は1800人で、被験者の所在地はカナダ、アメリカ、日本、イタリア、メキシコを含めさまざまでした。

その結果、インキュバス現象を生涯に経験する割合は全体的に見ると11%、だいたい10人に1人と、
これまで考えられていたよりも多くの人が経験していることが判明しました。精神疾患を持った人々や難民、
そして学生というカテゴリでくくると割合が増し、最大41%にまで上ったとのこと。
また、あお向けで眠ることやお酒の消費、睡眠パターンが不規則であることも、インキュバス現象に遭遇する確率を上げると示されました。

このことから、「単なる悪夢」として片付けられてしまうことがある金縛りやインキュバス現象は、
不安や妄想性障害、統合失調症を含む精神疾患などと関連している可能性が考えられ、
精神科医や心理学者は深刻に受け止める必要があると述べられています。
また、インキュバス現象を体験した人は「桁外れの」不安を報告しており、
「インキュバス現象の間、実際に死んでしまうのだと感じた」と語る人も多く存在します。
研究者らは、健康な人が眠っている間に突然死んでしまう突然死症候群とインキュバス現象との間にも
関連性があるのではないかという見方をしており、今後の研究が待たれるところです。

GIGAZINE
http://gigazine.net/news/20171220-incubus-phenomenon/