深海熱水系は「天然の発電所」
深海熱水噴出孔周辺における自然発生的な発電現象を実証
〜電気生態系発見や生命起源解明に新しい糸口〜

1.概要
国立研究開発法人海洋研究開発機構(理事長 平 朝彦、以下「JAMSTEC」という。)海底資源研究開発センターの山本正浩研究員と国立研究開発法人理化学研究所環境資源科学研究センターの中村龍平チームリーダーらの共同グループは、
沖縄トラフの深海熱水噴出域において電気化学的な現場測定を行った結果、深海熱水噴出域の海底面で発電現象が自然発生していることを明らかにしました。

深海熱水噴出孔から噴き出す熱水には硫化水素のように電子を放出しやすい(還元的な)物質が多く含まれています。
また、この熱水には鉄や銅などの金属イオンも大量に含まれているため、海水中に放出される過程で冷却されて硫化鉱物として沈殿し、周辺に海底熱水鉱床を形成します。
研究グループは、海底熱水鉱床の硫化鉱物について現場および実験室において電気化学的な解析をすることで、海底下の熱水から海底の硫化鉱物を介して海底面の海水に向かって電子の受け渡しが発生していること、換言すれば、電流が発生していることを確認しました。
この発電力は、熱水噴出孔を中心に少なくとも周辺約百メートル先の鉱物表面で観察されました。つまり、深海熱水噴出域が巨大な天然の燃料電池として機能していて、常に電流が発生していることになります。

これまで、分子の拡散にのみ依存すると考えられていた深海のエネルギー・物質循環が、鉱床中の電流を介しても起こることが明らかになったことで、空間的にもメカニズム的にも考え方を拡張する必要が生じ、今後理解が進むことで様々な分野への応用や展開が期待できます。
例えば、海底に電気をエネルギー源にする生態系が拡がっている可能性や、大昔の地球の深海熱水噴出孔において電気の力で生命が誕生した可能性を得たことで、地球外生命の探査方法も大きく変更されることになると期待されます。

本研究結果は、5月10日付けのドイツ化学会誌インターナショナル版「Angewandte Chemie International Edition」オンライン版に掲載されるとともに、今号の主要論文として本掲載誌の表紙(裏)のデザインにも採用されました。

タイトル:Spontaneous and widespread electricity generation in natural deep-sea hydrothermal fields
著者:Masahiro Yamamoto1、Ryuhei Nakamura2、Takafumi Kasaya1, Hidenori Kumagai1、Katsuhiko Suzuki1、Ken Takai1
1. Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology (JAMSTEC)、2. RIKEN Center for Sustainable Resource Science
Doi:10.1002/anie.201701768 and 10.1002/ange.201701768
--- 引用ここまで 全文は引用元参照 ---

▽引用元:JAMSTEC プレスリリース 2017年 4月 28日
http://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20170428/