<ナノカーレース>世界最小の大レース 科学者ら操作競う

毎日新聞 4/12(水) 12:05配信

 分子レベルの「車」を走らせて速さを競う世界初の「ナノカーレース」に、物質・材料研究機構(茨城県つくば市)のチームが日本代表として出場する。
ナノは10億分の1で、1ナノメートルは1ミリの100万分の1の長さ。分子を操作するのは、宇宙から地球上の野球ボールを扱うのと同じくらい難しいとされ、
ミクロのレースを通じて分子レベルの操作技術を争う。

 レースは、今月28〜29日にフランスで開かれ、日米独仏などの計6チームが出場。原子レベルの観察ができる仏国立科学研究センターの
「走査型トンネル顕微鏡」を使い、金の表面に自然にできた100ナノメートル(1万分の1ミリ)のジグザグのコースを、
「車」が36時間以内にゴールできるかを競う。

 物材機構が作成したナノカー(長さ2.1ナノメートル、幅0.93ナノメートル)は、炭素原子50個、水素原子34個、酸素原子4個の計88個の原子で構成。
棒の両端にはさみの刃がついたような形で、電気刺激を与えることではさみの部分がバタバタ動き、前進する仕組みだ。
パソコン画面を見ながら、電気刺激を調節して「運転」するという。

 物材機構のナノカーを一般的な乗用車の大きさに当てはめれば、コースは約200メートルの距離に相当する。

 分子を自在に動かすナノカーの技術は、薬を体内の目標の場所に運ぶ技術の開発などにつながることが期待されている。
チームリーダーの中西和嘉主任研究員は「走りきることさえ難しい耐久レースになるだろう。
他チームの車がどんなメカニズムでどんな動きをするのかを見られるのも楽しみだ」と話している。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170412-00000043-mai-sctch