現場代理人の変更で恥をかかされ、またヘドロ改良で損害を強制されたD社は、仮設堤防の追加工事の要請を拒否した。
契約にないだけでなく、仮設とはいえ堤防であるからそんな工事をしたことのないD社は安全を担保できないという理由であった。

 仮設堤防なしに土手部分の発掘はできない。しかしD社はこれ以上追加工事しないと言っている。
 発掘終了の期限の順守を約束していた発注者は、土手部分の発掘が必要なくなったとして、発掘しないことにした。
 これによって設計書にいい加減な数字を書き入れていた矛盾がすべて解決した。
 発注者にとって最善の解決法である。

 しかし土手部分の発掘は契約にあるものだから、これをしないということはD社にとって減額となる。
 D社は減額を受け入れるしかなかった。

 これがほんの十数年前の話。本当かどうかは発注者側に聞いても分からない。
 D社だけが知る実話である。お上に逆らえない業者の悲哀そのものである。
 D社の関係者が、お上は、業者は何でも言うことを聞くと思って無茶を言ってくる、今思い出しても腹が煮えくり返ると怒るばかりであった。