・アウシュビッツ生き延びたエバ・コールさん死去、85歳 「死の天使」の人体実験も

【7月6日 AFP】ナチス・ドイツ(Nazi)のアウシュビッツ・ビルケナウ(Auschwitz-Birkenau)強制収容所で、「死の天使」の異名で恐れられた医師、ヨーゼフ・メンゲレ(Josef Mengele)の人体実験を生き延びたエバ・モーゼス・コール(Eva Mozes Kor)さんが4日、ポーランドを訪問中に死去した。85歳だった。関係筋が明らかにした。

 コールさんは、米インディアナ州テレホート(Terre Haute)にキャンドルズ・ホロコースト博物館・教育センター(CANDLES Holocaust Museum and Education Center)を設立するなど、ホロコースト(Holocaust、ユダヤ人大量虐殺)の啓発活動に生涯をささげた。

 キャンドルズ・ホロコースト博物館・教育センターのツイッター(Twitter)への投稿によると、コールさんは4日、訪問先のポーランド南部クラクフ(Krakow)で死去した。同博物館は毎年、クラクフに近いオシフィエンチム(Oswiecim)にあるアウシュビッツ・ビルケナウ強制収容所跡などをめぐるポーランド訪問を主催している。

 アウシュビッツ博物館(Auschwitz Museum)は4日夜、「ほんの5日前に、アウシュビッツ博物館のアーカイブ用に、アウシュビッツの生存者エバ・コールさんの証言を記録したばかりだった」と投稿した。

 アウシュビッツ博物館はその動画をフェイスブック(Facebook)に投稿。その中でコールさんは、「最大の敵を許しましょう」「私はナチスを許したまさにその時、アウシュビッツから、自分の身に降りかかった全ての悲劇から解放された気がした」と述べている。

 コールさんにとって、ジェノサイド(大量虐殺)の原因となりかねない人種的偏見との闘いは、「お互いを尊重し対等に付き合う」のと同じくらい単純なことだったという。「大層な法律や、政府がなくてもできるんです」

■元ナチスの裁判で語った人体実験

 コールさんは2015年、ナチス・ドイツ親衛隊(SS)の元隊員で、「アウシュビッツの簿記係(Bookkeeper of Auschwitz)」と呼ばれ、ハンガリーのユダヤ人30万人に対する殺人ほう助罪に問われたオスカー・グレーニング(Oskar Groening)被告の裁判に証人として出席した。

 証言の中で、コールさんは双子に関心を示していたメンゲレ人体実験での経験を語った。コールさんには双子の姉妹のミリアムさんがいた。10歳の時、メンゲレに定期的に謎の薬物を注射されたが、どうにか生き延びることができたという。

 コールさんが高熱で苦しんでいると、メンゲレはベッド脇で「皮肉な笑み」を浮かべ、「気の毒に。彼女は幼すぎるから、もって2週間だろう」と述べたという。「私が死んだら、ミリアムが心臓への注射で殺される、メンゲレは(双子を)比較するために死体解剖をするに違いない」と思ったという。

 1945年1月27日、ソ連軍がアウシュビッツ・ビルケナウ強制収容所を解放。コールさんとミリアムさんも自由の身となったが、両親と姉2人は、アウシュビッツで亡くなった。

 ナチスが占領下のポーランドにつくったアウシュビッツ・ビルケナウ強制収容所では1940〜45年、100万人ものユダヤ人のほか、10万人に上る非ユダヤ系ポーランド人、ロマ人、ソ連人捕虜、反ナチスのレジスタンス闘士たちも虐殺された。アウシュビッツは、アドルフ・ヒトラー(Adolf Hitler)による欧州のユダヤ人大虐殺の象徴だった。(c)AFP

・Eva Kor, survivor of Mengele, dies during annual trip to Auschwitz
https://www.theguardian.com/world/2019/jul/06/eva-kor-survivor-of-mengele-dies-during-annual-trip-to-auschwitz

(第2次世界大戦中の自身と双子の姉妹のミリアムさんの写真を指すエバ・モーゼス・コールさん)
https://afpbb.ismcdn.jp/mwimgs/b/c/1000x/img_bc58d2c5fb0cfc9ca5f5815d8cb3ee68222501.jpg

2019年7月6日 16:15 AFP
https://www.afpbb.com/articles/-/3233941?act=all