突然ですが、「アメリカの男性」と聞いてどのようなイメージを思い浮かべますか?「体が大きい」「強そう」「カウボーイ」「レディファースト」などでしょうか?もしかすると、男らしい、「マッチョ」ということばを思いついた方もいるかもしれません。実はアメリカでは、「#metoo」を合言葉に、世界に波紋を広げたセクハラや性暴力の問題と、「マッチョさ」=「男らしさ」が関係しているのではないかという研究が進み、いま、関心を集めています。

■セクハラ・性暴力と“男らしさ”

取材を深めたいと思ったきっかけは、「#metoo」問題で取材したアメリカの専門家のことばでした。

「『#metoo』の動きの問題の根幹は、“男の子”の育て方にあると思う。アメリカでは、男の子は、感情的であってはならない、弱い面を見せてはならないと育てられる。要は『マッチョ』、男らしくなければならないとすり込まれる」

「#metoo」が世界に広がり始めた去年秋。発達心理学が専門の、アメリカ・ニューヨーク大学のナイオビ・ウェイ教授は、こう話してくれました。男らしさ、マッチョさと、セクハラや性暴力は関係があると言うのです。

■支持される「男らしさ」

アメリカの映画では、戦う男性は「ヒーロー」で、そのマッチョさが強調して描かれることがしばしばあります。アニメでも、「男らしさ」が描かれているものもあり、子どもたちは、小さいころから無意識のうちに「強い」「男性優位」の価値観に接しているとの指摘が少なくありません。

そして、アメリカ人の多くは、「男らしさ」を肯定的にとらえているようです。アメリカ人の男女およそ4500人を対象にした世論調査で、半数余りの人が、「男らしい男性を尊敬する」と答えています。(参考:ピュー・リサーチセンターが2017年12月に発表。対象はおよそ4500人、53%が「男らしい男性を『尊敬』」と回答)

ウェイ教授は、「アメリカの“カウボーイ社会”、“マッチョさ”はとても魅力的で、理想とされてきた面がある。男の子たちは、『マッチョ』、男らしくなるためには、成長していく過程で、弱さを悟られないようにするために、感情を押し殺すようになる」と言います。

「弱さ」や「優しさ」は女性的だと見られるため、男性が見せることが許される感情は「怒り」や「暴力」に限られる傾向があるそうです。その結果、権力を振りかざし、セクハラや性暴力などを起こす男性が出てくるとウェイ教授は指摘します。

■「女の子がうらやましい」

ウェイ教授は30年前から、思春期を迎えた10代の男子生徒たちから話を聞き続けています。男の子たちの友達や家族など、周囲との人間関係の築き方が人格形成にどのような影響を与えているかを調べるためです。

2012年には、135人の男子生徒を数年にわたって調査し続けた結果をまとめました。この結果、半数以上が、心身が成長していく中で、他人との会話が徐々に減っていくとともに、感情を表現することばも減っていったと言います。

こうした男子生徒は、交友関係が希薄になり、感情を外に出さない男性へと成長していく傾向があると分析しています。背景には、何でも話せる男友達がいることや、感情をあらわにすることは、女性っぽく「男らしくない」とみられている文化がアメリカには根強くあり、知らず知らずのうちにみずからの感情にふたをしていく子どもが少なくないということです。

「男子生徒に話を聞くと、『女の子がうらやましい。感情的になれるから』と話す。これがすべてを物語っている。誰が男の子たちに非感情的になれと言っているのか?それは、私たちの社会がそう言わせているのに等しい。われわれの文化が、男の子や男性に害を与えているのです」(ウェイ教授)

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NHK NEWS WEB
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