米金融当局者はかねて、日本経済が陥ったようなデフレ下の不況を避けようとしてきた。
しかし、連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は今、
一つの重要分野で米国が日本に多少似た姿になることを望んでいると考えられる。それは労働市場だ。

  失業率が1960年代後半以来の水準に低下し、それを容認するパウエル議長は、
当時を特徴付けた賃金・物価上昇によるインフレ急加速の悪循環につながることはないと捉えているようだ。
パウエル議長はむしろ、現在の日本にやや類似した展開を期待していると見受けられる。

  それは具体的には、米国を大幅に下回る失業率の下でも、
賃金やインフレにそれほど上昇圧力が生じていない日本の状況を指す。

  パウエル議長は13日、今年2回目となる利上げを決めた連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見で、
「率直に言って、低失業率には好ましい部分が多くあると考える」と語った。

その一方で、米国の低失業率が賃上げ要求を後押しし、
金融当局が容認不可能と見なす水準にインフレ率を押し上げれば、
当局はそれに対処するための利上げを余儀なくされるリスクがあり、
そうなれば9年間に及ぶ現行の景気拡大が危険にさらされかねない。

  パウエル議長は20日、欧州中央銀行(ECB)がポルトガル・シントラで開催している年次フォーラムで、
ドラギECB総裁、日本銀行の黒田東彦総裁、
オーストラリア準備銀行(中央銀行)のロウ総裁と共にパネル討論会に参加する。
フォーラムのテーマは「先進国経済での価格・賃金設定」だ。

  労働市場の改善に伴い、米国の賃金は多少上昇してきたが、
失業率の大幅低下を踏まえると賃上げの勢いがそれほど強くないことに意外感があると、パウエル議長は話す。
5月の失業率は3.8%と、2009年に記録した金融危機後のピーク(10%)を大きく下回り、
長期的に持続可能と当局者が推計する4.5%も割り込んでいる。

  パウエル議長は「これはちょっと謎めいている」と述べるとともに、
労働市場の引き締まりを受けて賃金も上昇するだろうと付け加えた。

  FOMCが13日に公表した最新の経済予測によれば、
当局者は米失業率が19年末までに3.5%に低下すると予想している。
インフレ率は2%の当局目標をわずかに上回ると見込まれているが、
パウエル議長は緩やかに金利を引き上げる「辛抱強い」アプローチを堅持する意向を示している。

  日本の4月の完全失業率は2.5%で、1月に記録した約25年ぶりの低水準を若干上回っただけで、
有効求人倍率は1.59倍と1974年以来の高水準だった。だが、賃金の伸びはよくても緩やかな水準にとどまり、
インフレ率は日銀目標の2%を大幅に下回っている。企業は基本給引き上げに慎重な姿勢のままで、
将来の景気悪化の場合にもっと容易に削減できるボーナスの引き上げを選択している。

日本の賃金伸び悩みにエコノミストはさまざまな理由を挙げており、
その幾つかは米国にもわずかに共通点がある。まず日本の非正規雇用は02年以降、約40%増えた。
正規雇用に比べ賃金は低く、賃上げの交渉力でも劣る。

  米国のパートタイム雇用は02年以降に約25%増えたが、フルタイム雇用が望ましいと考えている。
そして日本と同様、賃上げは困難な情勢だ。

原題:Powell’s Puzzling U.S. Labor Market Looks Somewhat Like Japan’s(抜粋)
https://www.bloomberg.com/news/articles/2018-06-19/powell-s-puzzling-u-s-labor-market-looks-somewhat-like-japan-s

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/i7j0Y9_9YC3c/v1/1000x-1.jpg

Bloomberg
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-06-19/PAK2OP6S972A01
続く)