2008年に160人以上が死亡したインド西部ムンバイの同時多発テロを巡り、
パキスタンのシャリフ前首相がパキスタン当局の関与を認めるかのような発言をし、波紋を呼んでいる。
7月25日に実施される総選挙では、シャリフ派の与党が優勢と見られてきたが、
政治に影響力を持つとされるパキスタン軍の反発が強まっており、与党に逆風が吹く可能性が出てきた。

「(パキスタンでは)武装組織が活動している。彼らが(パキスタン側から)国境を越え、
ムンバイで150人を殺害するのを我々は許すべきだったのか」。
シャリフ氏は今月中旬、有力紙ドーンとのインタビューでこう語った。
インドはこのテロにパキスタン当局が関与したと疑っているが、パキスタン政府は一貫して軍や政府の関与を否定。
シャリフ氏の発言が事実であれば、軍などが武装組織の動きを黙認していたとも受け取れる内容だ。

 発言の背景にあるとみられるのは、対インド政策などを巡るシャリフ氏と軍の対立。
シャリフ氏は昨年、所得隠しに関与したとして最高裁から議員資格を剥奪され首相を失職した。
シャリフ氏は同じインタビューで、この最高裁の決定の背後に軍の存在があると考えていることを示唆している。

 シャリフ氏のテロを巡る発言に対し、軍は猛反発。
発言の直後に軍の招請で開催された国家安全保障会議(NSC)は
「不正確で誤解を招く発言」として全会一致でシャリフ氏を非難。
一方、シャリフ氏の報道官は「発言はメディアが誤って伝えている」と火消しに追われている。

 総選挙を前に、シャリフ氏の失職など与党には問題が表面化している。
先月にはアシフ外相が所得を申告しなかったとして最高裁から議員資格が無効と判断されたほか、
今月初めにはイクバール内相が銃撃される事件も起きた。
選挙結果にも影響を与える軍の動きに注目が集まっている。

画像:シャリフ前首相
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毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20180528/k00/00m/030/084000c