ロシアのプーチン大統領は25日、サンクトペテルブルクで開かれた国際経済フォーラムで講演し、
安全保障を理由にした経済制裁を「新しい保護主義」と呼んで批判した。トランプ米政権による通商政策を示唆し是正を促した。
対話を重んじるロシアの立場を強調し、国際社会での孤立感を払拭する狙いとみられる。

 プーチン氏は演説で「安全保障を口実に競争相手に圧力をかけている」と指摘。
国家間で結んだ約束を一方的に破る行為は許されず「世界に危機をもたらしかねない」と訴えた。
名指しは避けたが、鉄鋼などの輸入関税引き上げや、対ロ制裁を行う米国を念頭においた発言とみられる。
経済制裁是正に向け国際的な連携も呼びかけた。

 トランプ米大統領が表明したイラン核合意からの離脱や米朝首脳会談の中止にも言及。
プーチン氏は講演後の質疑応答で、「トランプ氏は対話のドアを閉ざしてはいない」などと述べ、
米国を交えて議論を続ける必要性を訴えた。

 講演には安倍晋三首相、フランスのマクロン大統領、中国の王岐山国家副主席、
国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事が参加した。
プーチン氏は欧州やアジアの要人を集めた場で国際的に波紋を広げる米国に政策の修正を求め、
影響力を印象づけたい考えだ。マクロン氏は「強固な多国間主義が必要だ」と述べ、
ロシアを含む各国と協力を深める重要性を強調した。

 プーチン政権は国際的な催しに外国の要人を招き、国際社会での存在感を高めようとしてきた。
同フォーラムには2017年にインドのモディ首相、16年に欧州連合(EU)のユンケル欧州委員長が参加。
今回は英国で起きたロシア人元スパイ毒殺未遂事件などを巡って欧米との関係が悪化するなかで、
欧州やアジアから豪華な顔ぶれを集めて面目を保った。

 大統領府によると、フォーラムは70カ国の約1万5千人が参加した。
24日にはロシアのガス大手ノバテクによる北極圏液化天然ガス(LNG)事業への仏トタルの新たな出資が発表され、
米欧の制裁下でも続く外国企業からの投資を演出した。

 プーチン氏は4選を決めた大統領選後から対外強硬的な発言は抑え、対話による解決を呼びかけてきた。
イラン核合意などで欧州、アジアと足並みをそろえ、
関係改善の兆しが見えない米国を交渉の場に引き出したい思惑もあるとみられる。

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日本経済新聞
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