イスラエルの女性は平均で3人の子どもを産む。先進国では突出して高い出生率の一因が、
世界に類をみない出産奨励策だ。背景には家族を重視するユダヤ人の文化や宗教に加え、
悲劇の歴史や政治が絡んでいる。(テルアビブ=渡辺丘)

 地中海に面したイスラエル中部ヘルツェリアの病院は、待合室に生殖補助医療を受ける女性が列をつくっていた。
最新の医療機器が並んだ室内で体外受精の作業が行われ、専用のタンクでは受精卵の凍結保存もしている。

 イスラエルでは1995年の国民医療保険法制定以来、
@女性が45歳までで、A現在のパートナーとの間に2人の子どもを得るまでの間、
体外受精の費用が国の保険で全額賄われている。人口880万人に対して体外受精は年間4万件超。
100万人あたりの件数は世界一だ。年間に生まれる子どもの5%近くを占めている。

 生殖補助医療は半ば国策だ。保健省のミラ・ヒブナーハレル前法律顧問は言う。
「第2次大戦中のホロコースト(ユダヤ人大虐殺)で600万人が犠牲になり、その後の戦争でも多くの命が失われた。
ユダヤ人の国家において家族を持つことは最も重要な価値になり、生殖補助医療の超大国になった」。
自身の両親もホロコースト生存者だ。

関連ソース画像
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朝日新聞デジタル
https://www.asahi.com/articles/ASL3Z149YL3YUHBI03L.html