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2017年12月8日 / 02:41 / 2日前

Josh Cohen
[29日 ロイター] - ロシアのプーチン大統領が放つ国際的な存在感が、これまで以上に強くなっている。識者のあいだでは「中東の新たな保安官(シェリフ)」と呼ぶ声もあるが、それも無理からぬところだ。

プーチン大統領は11月半ば、ロシア黒海沿岸リゾート地ソチで、シリア、トルコ、イランの指導者たちと会談を行い、シリア和平交渉のロシア主催についてトルコ、イラン両国の支持を得て、シリア内戦終結に向けた本格的な国際外交における主役の座を手中に収めた。

ソチの首脳会談で目を引いたのは、米国や欧州連合(EU)の代表団が含まれていなかったことだ。今回の主眼は中東情勢だったが、プーチン氏の影響力が同地域を超えて拡大していることは明らかだ。

欧州では、2014年にウクライナの親ロシア派大統領が権力の座を追われた後、プーチン大統領はクリミア半島を併合し、東部ドンバス地方の分離独立主義勢力を支援することにより、同国を混乱に陥れた。

アジアでは中国との関係をますます深めつつある。

米国においては、2016年大統領選挙でロシアによる介入がトランプ大統領を勝利に導いたとの「ロシアゲート」疑惑が、トランプ政権の政策推進に暗い影を落としている。

経済停滞に苦しむ、かつての超大国の指導者としては、これは実に驚くべき急転回だ。ロシアの国内総生産(GDP)が1兆2830億ドル(約144兆円)と、米国のわずか7%にすぎないことを思えば、プーチン氏は格下にもかかわらず素晴らしい健闘を見せていると言える。

しかし、プーチン氏の見かけ上の成功は、失敗に終わるかもしれない。同氏を「卓越した戦術家」だと評価する向きは、積み重ねた実績が目の前で突然崩壊するリスクを見過ごしている。

ウクライナ問題を取り上げてみよう。ロシアは歴史的に、南に位置するこの隣国の支配をもくろんできた。プーチン大統領は、同国がロシア政府の影響下を離れ、西側に仲間入りすることをひどく嫌っている。

クリミア併合後、ロシア政府は、親ロ派指導者、現地協力者、そしてロシア非正規部隊の三者が連携することで、ウクライナの半分に当たる南東部全体を支配することを狙ってきた。ウクライナ軍の実戦部隊は6000人程度にすぎないため、この「ノボロシア(新しいロシア)」樹立というプーチン大統領の夢は実現間近であるように思われた。

プーチン氏にとって残念なことに、計画どおりに事は運ばなかった。ウクライナは文化や言語的に、ウクライナ語を用いる西部の親欧州派とロシア語を用いる東部の親ロシア派に分かれているが、プーチン大統領が彼らの国に戦争を仕掛けたことで、ウクライナ国民としてのアイデンティティが結実してしまったのだ。

民間資金に支えられた武装部隊と市民からの志願兵に支援され、ウクライナ正規軍は、ロシアの支援を受けた分離独立派とその協力者を退けた。最近行われた世論調査では、2014年以前に比べ、ウクライナ人としての国民意識が高まっていることが分かった。EUや北大西洋条約機構(NATO)といった西側組織への加盟を支持する率が跳ね上がる一方で、反ロシア感情も強まっている。
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