【リポート】世界の街から
フィリピンで旧日本軍の財宝探し
2017/7/5 16:00
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2005年11月、フィリピン・ルソン島マバラカット町マルコス地区の山中で、「山下財宝」探しが行われた洞窟(共同)
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 日々ニュースを追っていると、時折、もう「歴史」になりかけているのではないかという話題に出くわす。

 「ハント・フォー・ヤマシタ・トレジャー」。フィリピン紙に先日、こんな見出しが躍った。第2次大戦中に旧日本軍が隠したとされる伝説の「山下財宝」探しに乗り出すフィリピン人男性らについて伝えていた。

 記事によると、男性らは当局の許可を得て、北部バギオで財宝探しを始める。リーダーの男性が、日系人の老人から「子どもの頃、日本軍から財宝を埋めるよう命じられた」と聞き、財宝の存在を信じたのだという。

 老人の証言に基づき、公共施設の駐車場に穴を数カ所掘り、金属探知機が反応すれば本格的に掘削を進める計画という。発見時の取り分は国と自治体が計7割、発見者が3割と捕らぬたぬきの皮算用も報じられた。

 1990年代前半にマニラ支局に駐在した記者から「当時はたまに山下財宝を探しているというフィリピン人が支局にやってきた」と聞いたことがあった。「財宝まであと3メートルなんだ」と熱く語り、暗に掘削費用の出資を求めてきたという。

 21世紀になってもなお冷めないお宝への情熱。戦後72年を経て旧日本軍の財宝が見つかれば1面に載る大ニュースだ。どんな記事が必要か検討することにした。

 しばらくしてバギオの当局者にその後の経過を尋ねると「ああ、あの話ですか。早々と諦めたみたいですね」。

 男性らの夢ははかなくついえた。「財宝発見」で1面の記事を書くという私の計画も皮算用に終わった。(共同通信=マニラ支局・岩橋拓郎)