マグミクス 7/26
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●製作委員会の前は「テレビ局悪人説」
実は「アニメーター給料安い説」は1990年代から言われており、その昔は「テレビ局悪人説」だったのです。テレビアニメづくりにおいて、製作委員会方式(複数の企業が制作資金を提供し作品の権利を出資比率に応じて保有する方式)が主流になったのは、『新世紀エヴァンゲリオン』が大ヒットし、深夜アニメが雨後の竹の子のごとく増えはじめた1990年代中盤以降です。それ以前は圧倒的にテレビ局主導でした。

ネットなき当時のテレビ局はメディアのお代官様、いやそれどころかお殿様で、その権力は絶大なものでした。それもあってか、制作現場に睨みを効かす「お上」というイメージがあったのは確かです。今では信じられないことですが、実際テレビ局からアニメーション制作会社への支払いが低く抑えられている状況が長らく続いていました。しかし、それでは作品はつくれないので、広告代理店が制作費を補填し、グッズのロイヤリティー収入を分配するといったやり方でアニメスタジオは頑張って制作を続けて来ました。

●テレビ局から製作委員会主導の時代へ
そんなTV局が権利を持っていた状況に変化が訪れたのは、製作委員会システムが一般的になってきてからです。昔からある夕方帯・土日朝帯に放送されるキッズ・ファミリー向けアニメに対し、作品数が多くなった深夜アニメでは、テレビ局は放送枠を売るだけになり、アニメづくりの主導権は製作委員会が持つようになりました(テレビ局が主導権を持つケースもありますが、フジテレビのノイタミナ枠などごくわずか)。

制作費も委員会から直接アニメスタジオに支払われるようになり、その金額も委員会とスタジオの両社の話し合いによってキチンと制作が出来る水準まで上がりました。したがって、安かったテレビアニメの制作費を上げてくれた製作委員会システムは、アニメスタジオやそこで働くスタッフにとっては大いなる福音だったのです。

●アニメ制作費は増えている
筆者は『アニメ産業レポート』(日本動画協会発刊)という統計年鑑の編集をしていますが、そこに寄せられるアニメスタジオからのコメントを見ると、ここ数年でアニメの制作費が上がってきていることがわかります。その理由は大きく分けて3つに分析されます。ひとつはアニメ制作本数の増加に伴う「需要と供給」の関係性によるもの、ふたつ目は働き方改革による労働環境整備コストの増加、3つ目がNetflixなどの海外資本による大型予算作品の出現です。

『アニメ産業レポート』に寄せられるアニメスタジオのコメントを考慮すると、制作費は数年前よりおそらく平均で20~30%アップ、海外投資作品については国内標準の2倍から3倍といった状況であると推測されます。こういったことから考えても「アニメーターの給料が安いのは製作委員会のせい」という指摘は外れていると言わざるを得ません。それ以前に、そもそもアニメーターの給料を決めるのは製作委員会ではなくアニメのスタジオですから。

●アニメスタッフの給与は10年間で1.76倍
前出の『アニメ産業レポート2022』の統計を見ると、日本のアニメ産業は成長していることがわかります。2009年に1兆2661億円だった売上(アニメ配信やキャラクターグッズ、映画やコンサートなどに対してユーザーが支払った総額)が、2020年には2兆4261億円とほぼ倍近くになっています。それもあってアニメ制作の現場に従事するアニメスタッフ給与も確実に増えています。

定期的にアニメのスタッフに対するアンケートを行っているJAniCa(一般社団法人日本アニメーター・演出協会)は過去3回に渡る調査を発表していますが、その推移を表したのが【資料1】「民間平均給与とアニメ制作職給与比較」です。

これを見るとアニメスタッフの給与が10年間で1.76倍にもなっていることに驚かされます。最初の調査対象の平均年齢が31.9歳と低かったからとも言えますが、3回目の2019年の調査ではわずかながらも民間より1000円上回るという結果になりました。平均年齢も民間より7.15歳低く、また、調査にある本職以外の「ロイヤリティー」「著作権」「印税」「教職」「漫画」「イラスト」「同人誌」「会社役員報酬」からの収入も加えると496.9万円となるので、民間との差はさらに56.2万円と広がります。

●「給料が安いアニメーター」とは主に動画職のこと
製作委員会システムになってむしろ制作現場の給与が上がっていることが分かりましたが、肝心のアニメーターはどうなっているのでしょうか?


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