ビデオゲームなどをやめられなくなる「ゲーム依存症(ゲーム障害)」に対し、大阪精神医療センター(大阪府枚方市)が、複数の患者が一緒に取り組む集団治療プログラムを進めている。現状では確立された治療法がないため、患者が失敗談などを共有する薬物依存治療の手法を取り入れた。こうした試みは全国的にも珍しいという。

ゲーム依存症は、スマートフォン(スマホ)や専用端末などのゲームに寝食を忘れて没頭し、生活に支障が出る状態。未成年に多いとされるが、病気だと十分に認識されず、治療を受ける子どもは一部とみられている。

治療プログラムは、〈1〉不登校〈2〉昼夜逆転〈3〉暴力的――のうち複数の項目が該当する通院患者が対象。医師や看護師、臨床心理士らが1回90分のプログラムを半年かけて10回行う。

具体的には、日々の睡眠時間を患者に記録させて生活リズムの改善を指導。体操や工作などに挑戦させ、新たな楽しみを探す。薬物依存の集団治療プログラムを参考に、患者がゲームのやり過ぎによる失敗談などを話し合う場も設ける。

2019年6月に始め、中学生ら約10人が参加。全プログラムを完遂した4人では、全員が依存の度合いが軽減したと感じ、3人は睡眠時間も最大約2時間増えたという。

国内では、医師が外来でのカウンセリングなどで行動の改善を促す医療機関が多い。同センターの花房昌美医師は「ゲームの時間が減る効果はまだ見られないが、釣りなどに打ち込めるようになった患者もいる。さらに改善したい」と話す。

神戸大の曽良一郎教授(精神医学)の話「スマホやゲーム機を使わせない合宿『オフラインキャンプ』などと同様に良い働きかけだ。ただ、ゲーム依存症は、治療の有効性が分かりにくいため、検証を積み重ねる必要がある」

 ◆ゲーム依存症=世界保健機関(WHO)が2019年に精神疾患と位置づけ、勉強や仕事に大きな支障があってもゲームをやめないなどの状態が1年以上続くか、短期でも症状が重いものと定義した。17年度の厚生労働省研究班の調査では、ゲームやネットに依存する中高生は93万人と推計された。

読売新聞
https://www.yomiuri.co.jp/national/20210124-OYT1T50055/
2021/01/24