アニメやドラマ、映画などのロケ地を訪ねることを「聖地巡礼」と言うが、実は兵庫県香美町香住区も、
あるアニメの舞台になったことがある。テレビ放映から既に10年以上が経過しているが、町には今も巡礼に訪れるファンが絶えない。
香住観光協会は、舞台探訪マップや旅の思い出を書き残せるノート、作品に関連するグッズが当たるくじなどを用意。
“聖地”から歓迎の意を表している。(黒川裕生)

 そのアニメとは、2005年に放映された、同名パソコンゲームが原作の「AIR」。さすらいの旅を続ける青年が、
海辺の田舎町で出会った少女と交流するひと夏の物語−と思わせて、後半からは意表を突く壮大な展開に変わり、
強烈なインパクトを残す作品だ。

 この「海辺の田舎町」というのが、香住の風景と実によく似ているのである。制作会社などはロケ地を明らかにしていないが、
2人が初めて出会う防潮堤は、香住高校(香住区矢田)裏手にあるそれとそっくり。
ほかにも香住天文館(同区一日市)や川に架かる橋(同区下浜)など、
地元住民にはどこか見覚えのあるポイントは枚挙にいとまがない。

 これにいち早く気づいたのは、町建設課の小林義卓さん(42)。
観光商工課に在籍していた10年ほど前、インターネットで「『AIR』の舞台は香住なのでは」と話題になっているのを偶然発見し、
同協会に「何か面白いことができるかも」と伝えたという。

 当初は聞き流していた同協会。しかし毎年夏を中心に、ファンらしき観光客が相次いで訪れるようになるに至り、
ついに重い腰を上げた。5年ほど前、常連ファンの“監修”を受けながら、アニメに登場する場所などを示した探訪マップを作成。
同協会で無料配布を始めた。年間100人前後の訪問はその後も続いており、
昨年は、来訪者が書き込むノートとくじも新たに設置した。

 ノートには「景色がそのままで感動した」「心が洗われる場所」などの書き込みが多数。年代は20〜50代と幅広く、
中には一緒に探訪したことを機に結婚したカップルもいるとか。無料で挑戦できるくじの景品には、
作品にちなんだある飲み物や、ファンが提供したグッズを取りそろえている。

 制作会社や版権を持つTBSに、「長く愛されてうれしい」という趣旨のコメントをもらおうと試みたが、
残念ながら思うような反応は得られなかった。そこで次善の策として、
アニメにひどく詳しい道の駅「あゆの里矢田川」(村岡区長瀬)の阿瀬大典駅長(40)のコメントを紹介しよう。

 「『AIR』は超ど級の名作。香美町が誇るべき宝です。舞台が村岡ではないことが、悔しくて仕方ありません」

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■アニメ「AIR」のオープニングに登場する香住天文館
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■重要な舞台の一つである香住高校裏の防潮堤
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■香住観光協会が用意しているマップやノート
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■登場人物をデザインした飛び出し坊やも町のあちこちに
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神戸新聞NEXT
https://www.kobe-np.co.jp/news/tajima/201807/0011454146.shtml