連載・コラム 2018.1.20(土) 20:00

2018年の大学入試センター試験「地理B」にて、アニメーション作品の舞台とその土地の言語を問う選択問題があった。
答えはそれぞれ『小さなバイキング ビッケ』の舞台がノルウェーでノルウェー語、『ムーミン』の舞台はフィンランドでフィンランド語ということだが、この問題が議論になっている。
『ムーミン』の原作者であるトーベ・ヤンソンはフィンランド人だが、『ムーミン』の舞台はムーミン谷という架空の土地と設定されており、
作品の舞台を現実のフィンランドと回答させるのは間違いではないか? ということである。

また、本件に関して16日、ムーミン公式サイトから公式見解が発表されたが
(「ムーミン谷はどこにある? 〜センター試験地理Bの出題に寄せて〜」http://line.love-moomin.jp/20180116/moomin_official01.html)、
そこで指摘されている通り、原作とアニメ版とで設定が違う可能性がある。

試験で問われている1969年と1972年に放送されたアニメ版『ムーミン』(1990年放送開始の『楽しいムーミン一家』ではない方)は権利者の元にも設定資料が残っていない上に、
DVDやBlu-rayが発売されておらず現在は国内での再放送もされていないため、舞台設定の確認が難しい状態となっている。

仮にセンター試験出題者の理屈に沿うと、アニメ『それいけ!アンパンマン』の舞台は日本である、という事になるが、これには違和感があるだろう。
事実、アンパンマンポータルサイト(http://www.anpanman.jp/index.html)のQ&Aコーナーでは、
舞台は「広い広いこの世界のどこかにきっとあるはずです」「地球から、日本から近いのかもしれませんね」としている。

アニメに限らずだが、作品とその中で描かれる現実の土地との間には様々な関係がある。
大別すると「作品の舞台=現実の土地」というパターンと「現実の土地が作品舞台のイメージのベースになっている」というパターンである。

アニメでいえば、戦中の広島県呉市が主な舞台である『この世界の片隅に』や、現代の東京の池袋を舞台にした『デュラララ!!』、
同じく東京の四ツ谷駅や六本木ヒルズ、岐阜県の飛騨市図書館が舞台として描かれた『君の名は。』などは前者のパターンである。
これらの作品の場合、現実の土地や施設が作中でそのまま描かれているため、その場を実際に訪れれば作中とほぼ同じ風景が見られる場合が多い。
また、地方自治体とのコラボレーションでイベントなどが催されるケースもあり、ファンの”聖地”として賑わうこともある。