秋葉原左「(こんなにノーブレーキで突進するバカがいるとは…頭を丁寧に狙ってKOといこう)」
秋葉原左はガードを下げ、膝を軽く曲げて前後にステップを踏み始める。
突っ込んできたウーチャマの側頭部に狙い通り右のハイキックが命中したが、同時に秋葉原左の顔面にもウーチャマの拳が入った。
秋葉原左「蹴りとパンチが相打ち!?バカなっ!なんて踏み込みだ!」
再び突っ込むウーチャマの顔に今度は左ストレートが入る。だがそのストレートに合わせた右フックが秋葉原左の顔を捉えた。
互いの衝撃で一瞬停止した両者だったが、よろめいて膝をついたのは秋葉原左である。
秋葉原左「クソがっ…何で、倒れねえんだ…ヤクでも…キメてんのか…テメエはっ…」
そしてその顔の位置は、膝蹴りに丁度良い高さであった。
ウーチャマ「アアアアアシャオオォォウ!」
頬に渾身の右膝が激突し、秋葉原左が弾け飛ぶようにのけぞる。
ウーチャマはその頭を両手でつかみ、左右の膝を交互に放つ。噴き出す返り血でその太ももが真っ赤に染まった。
1分ほど蹴っていたウーチャマがピタリと動きを止める。掴んでいた首から脈が途切れたのに気づいたのだ。
ウーチャマが天井に向けておよそ言葉にならない叫びをあげ、それに応えて客も拳を突き上げ声援を送る。
リングの中と外とが、戦いの興奮と甘美で一体となっていた。

『これは野生の戦闘マシーン…いや、殺人マシーンと呼ぶべきでしょう!素手のムエタイ恐るべしっ!
原始、人間は知能だけで地上を支配したわけではないっ!力があったから支配したのだと!そう我々に教えるような試合でした!』

客席に向けて歯をむき出し、目を見開き、次の獲物を探すようにウーチャマが去っていく。
焼けた肌がまだらに返り血で染まり、まるで毒ヘビの模様のようであった。

〜続く〜