孤独のグルメ|S|S 「第十一試合」

『赤コーナー!秋葉原外国人左側ー!MMA出身の賭けストリートファイターです!』
両手を上げて笑顔で入場する。下はハーフパンツにスニーカー、上半身は裸である。
その腕と背筋の盛り上がりから、パンチ系の技を得意とするのがよく分かる。
秋葉原左「(相棒の秋葉原右が破れるとは、相当にハイレベルな大会だ…だがそういうピリピリっとした緊張がたまらない…)」
格闘の中毒者がまた1人、まばゆいリングに吸い込まれてゆく。

『青コーナー!ウーチャマ・"アシラポンナックン"・シャーマン!十代でインドシナに渡り、日本人ながらムエタイ王者に就きました!
しかも、そのムエタイは素手によるスタイルっ!17戦17勝17KO、うち12殺という戦慄のキャリアだあ!』
咆哮と共に野獣のごとくウーチャマが駆ける。赤銅色に焼けた肌と伸び放題の黒髪が相まってとても日本人には見えない。

秋葉原左「人相手とは思えん…まさに動物と向かい合った感じだな」
ウーチャマ「ホアッ!!」
ウーチャマの挨拶代わりのハイキックをかわし、逆に秋葉原左のジャブがウーチャマの顔を叩く。
しかしウーチャマはジャブを受けながら前進し、秋葉原左の左足に左右からローキックを打ち込んだ。
秋葉原左「俺とインファイトする気か、上等だッ!」
素早い右のミドルキックがウーチャマの腹にめり込む。ウーチャマの表情が一気に険しくなった。
秋葉原左「(手ごたえあったぜ…並みの奴なら一発ゲロもんだ)」
ウーチャマ「ハアハッ!」
だがウーチャマは下がらない。鋭い右フックが秋葉原左の上腕を叩いた。
ガードを固めた秋葉原左に対し、ガードした腕そのものを破壊するように膝蹴りが何度も放たれる。
密着状態の打撃はムエタイのお家芸である。ヒジと膝の嵐が秋葉原左に襲いかかった。
秋葉原左「この猿めっ…離れやがれ!」
ウーチャマの顔面に秋葉原左の頭突きがヒット、一瞬の隙をついて秋葉原左が素早く下がり距離を取った。