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大量生産に成功し、青い光を当てると緑の蛍光色を発する繭(右)と通常の繭
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遺伝子組み換えで開発した繭から糸を取る宮坂製糸所の従業員


 長野県岡谷市の宮坂製糸所で、緑の蛍光色を発する繭の糸取りが行われている。
農業・食品産業技術総合研究機構(茨城県つくば市)が遺伝子組み換えにより開発した繭で、同社が技術を買われ、織物生産に向けた初の糸取りを託された。
出来上がった生糸は、京都市の西陣織業者がカーテンなどインテリア用の織物に仕上げる予定で、同機構は「実用化に向けた第一歩を踏み出せた」としている。

 同機構は2008年、同年のノーベル化学賞受賞者、下村脩氏が発見したオワンクラゲの緑色蛍光タンパク質の遺伝子を導入した蚕を開発。
繭は淡い緑で、発光ダイオード(LED)電球などの青い光を当てると鮮やかな緑の蛍光色を発する。
通常の繭より小ぶりだが、生糸の強度は変わらないという。

 同機構によると、今年10月に前橋市の養蚕農家が繭の大量生産に成功。
通常の糸取りは湯温65〜97度で繭を煮るが、この繭は70度を超えると色が抜けてしまう。
このため65度以下で煮る技術がある宮坂製糸所に糸取りを託した。

 繭は11月に初出荷し、全量の計176・1キロを同社に供給。来年1月末までに24キロ分の生糸を生産する。

 同社などは11日、岡谷市立岡谷蚕糸博物館内にある工場で作業を公開。
高橋耕一専務(51)は
「化学染料を使わない100%天然の絹織物にはニーズがあるはずだ。蚕糸業全体を盛り上げるきっかけにしたい」。
蚕を開発した同機構の飯塚哲也上級研究員(48)は
「『お蚕さま』の可能性は着実に広がっていく」と普及への期待を話した。


緑に光る繭、初の糸取り 実用化への一歩 
信濃毎日新聞:2017.12.12 20:25