「薩摩と長州で力を合わせ、新たな時代を切り開いていきたい」と、鹿児島県をヨイショし、わざわざ桜島をバックに出馬を表明しながら、
「我が胸の燃ゆる思ひにくらぶれば煙はうすし桜島山」と、幕末の志士が薩摩への失望を詠んだ歌を引用している。
どうやら、歌の意味を知らずに「桜島」という単語で選んだらしく、無教養ぶりを露呈した。今回は無教養で済まない。
「しきしまの 大和心のをゝしさは ことある時ぞ あらはれにける」。安倍首相が引用したのは明治天皇が詠んだ歌。
「日本人の大和魂の勇ましさは、(平時では現れなくても)何か起こった時こそ現れるものだ」という意味で、
日露戦争真っただ中の1904年に詠まれた。進行中の日露戦争に向けて、国民を鼓舞激励する天皇の「打倒ロシア」の号令なのだ。
日本は大国ロシアを破り、ロシアから南樺太(サハリン島南部)などを奪っている。安倍首相は、日露戦争が大好きらしく、
2015年の「戦後70年談話」でも、「日露戦争は、植民地支配のもとにあった、多くのアジアやアフリカの人々を勇気づけました」と語っている。
しかし、ロシアにとっては目を背けたい黒星だ。「どうして、北方領土問題が難航するこのタイミングで、“対露戦争”に号令をかける意味の短歌を引用したのか理解に苦しみます。
ロシアに押されっぱなしの安倍首相は、国内向けのアピールを込めたのかもしれませんが、ロシアは戦争を仕掛けられたと受け止めるはずです。
怒ったプーチン大統領は6月の大阪G20をボイコットするかもしれません。ロシアにとって日露戦争は、アジアの後進国に負けて、
サハリンという領土まで奪われた屈辱の戦いですからね。第2次大戦後、ロシアが北方領土を占領し、その後も引き渡しに応じないのは、
日露戦争の仕返しとの意味もあるのです」年頭会見でも、安倍首相は北方領土で暮らす住民の「帰属問題」を持ち出しロシア国民を怒らせた。外交のイロハが分かっていない。