”文量多いな”────HIDEチャンは目を細めて言う
この時ばかりは「ダンプカー」と「ミキサー車」しか喋れない禁治産者の目ではなく
リアルなHIDEチャンの、知能に障害を持たない素の大人の表情であった
HIDEチャンが、公にこのような「感想」を述べるのは異例
暫くしてその両目をやや達磨のように丸くしたかと思うと(未だ諸氏が)聞いたこともない低い音で
うなり出す”ブーン、ブウーン”

クマン蜂の飛行よりも、幾らか低い周波数────
「ン、うかつだったのだろう」──加藤は看破する
HIDEチャンは確実にダメージを受けている
これまでのHIDEちゃんときたら、(その性質上)長文では負けなし
たとい相手に若干チリつかされたとしても、返す刀(言葉)で画面を埋めつくせば勝てた
それでいい、いざとなれば文量でねじ伏せる、対して防御方面は一貫して”スンとすればいい”
そんなフシがあったし、自負があったし!

それが最も侮っていた相手、”三元豚”が、こうも、ほのめかさない長文を書(ショ)せるとは

いうのも!

バアン!!!───HIDEチャンは珍しく学習机を叩いた
先月の「偽豚ユースアネイジア連投襲来事変」依頼である
通常人は5秒間に1回相手をディスることができるがHIDEチャンは2.7秒に1回ディスれる
この手数の多さにも関わらずHIDEチャンは焦っていた───
流れているBADHOPの「Foreign」を停止し、代わりに「Hammer Smashed Face」の
再生ボタンを押して学習机をバンバン叩いて吠える
その衝撃でチャン初恋の相手IssaLishのポートレートが落下し、Beautifulpeopleのトートバッグに突き刺さる

”なんでが!ただ色彩豊かなだけの豚のくせに”
「勝負あったな」───加藤は軍配を挙げかけた
その時であった!
つづく