初老島────
それは、齢50を過ぎて”何者にもなれなかった”者どもが住む楽園の遥か南に存在する島

島では、おのおの地味なシャツを着たりし初老がオリジナルカラオケソングを歌ったり
SuzuriでオリジナルTシャツを販売して「ちょっとしたアパレル業」などと発言しているという

全員アーティスト
だがそこではライブもコンサートも存在せず、「SNS」だけが発表の場であった

発露(ハツロ)する、発露──────!!
一人の初老が声を荒げた
またしても作品のアイディアが浮かんだ、いや、降りてきたのである
この島の上空に天国はない、だが、太陽に代わる星座か何かからエッセンスが降り注ぐのである

バン、バン、カチカチッ!!
必要以上に大きな操作音を響かせて無料DAWが生み出す「わが」傑作

それぞれの初老がそれぞれのクリエイティブを常に発揮しているため、
その作品に聞き入る者は一人もいなかった

だが、発信者は受け手に依存していなかった
この世界では発信こそが究極のゴールなのである

あと3曲でアルバムリリース

初老はやや鼻毛の伸びた鼻を膨らませて息巻いた

光世紀およそ129年頃のことだったという

光世紀第190章 〜アビニヨンの橋で跳踊(おど)りし者〜
令和3年2月1日
全国の給付金受付センターで一斉無料配布