http://www.yomiuri.co.jp/osaka/news/20161111-OYO1T50024.html

市民負担で穴埋め、2032年度まで
 大阪市が、JR天王寺駅南西部で40年かけて進めてきた関西最大規模の阿倍野再開発事業(28ヘクタール)
の最終赤字額が約2000億円に上ることがわかった。梅田、難波と並ぶ新都心を目指し、
大型商業ビルやマンションなどを建設したが、バブル崩壊による地価下落が響いた。赤字穴埋めによる市民負担
は2032年度まで続く見通しで、吉村洋文市長は「市財政を逼迫ひっぱくさせている」として検証を指示。市は今年度内に結論を出す方針だ。

◆負の遺産
 総工費4810億円の同事業は1976年にスタート。古い家屋や商店が密集する地域の土地を市が買収し、
ビル・マンション計29棟や公園などを整備。今後は道路整備などを残すのみで来年度に全事業を終える。
市街地の再開発計画では神戸市の新長田駅南地区の約20ヘクタールを上回り、関西最大。
建物の売却益などで、ビル建設や用地買収にかかる事業費を償却する計画だった。
 最終赤字額は事業終了を前に、市が今年3月に特別会計を清算して判明した。売却収入は2257億円にとどまり、
今後の資産売却を見込んでも、赤字は約2000億円になるという。

赤字の要因は、バブル経済期に高値で買った土地の価格がバブル崩壊後に急落したことが大きい。
また97年には、63階建て高層ビルなど4棟の建設計画の中心施設に予定した大手百貨店「そごう」(2000年破綻)が
経営悪化を理由に撤退を表明し、事業が停滞。収益が大幅に悪化し、計画の縮小を余儀なくされた。
 09〜15年度、市は同事業の赤字穴埋めに計923億円を投入し、今年度も120億円を計上。
32年度まで赤字の穴埋めは毎年度続く予定で、「事業としては、負の遺産と言わざるを得ない」(市幹部)状態だ。

◆南北格差も
 市の財政を悪化させている同事業だが、地域の活性化につながった面もある。
 計画区域の人口は約6300人から約8000人に増加。11年に大型商業ビル「あべのキューズモール」
が近くに開業した阿倍野筋1丁目東商店会(約30店)では14年に区域そばに完成した日本一高い
「あべのハルカス」との相乗効果もあり、和田一義会長(68)は「観光客が増え、
周辺の店では売り上げが1割ほど増えた。昔なら考えられなかった」と近年の活況を歓迎する。
 一方で、新たな課題も表面化している。区域内の北と南で広がる「格差」だ。
 87年、対象地区の南東端に開業した複合ビル「あべのベルタ」は北側地区とは対照的に、
ビル内では空き店舗が目立つ。バブル期やその前から入居した店舗がバブル崩壊で相次いで閉店、
撤退に追い込まれたためだ。「あべのベルタ商店街振興組合」の森田博子理事長(76)は「ビルの老朽化ばかりが進み、
空き店舗への新規参入も期待できない」と肩を落とす。
 地元店主らの要望を受け、市は、同区域内を走る阪堺電気軌道の軌道内を芝生化し、景観向上を図る事業を始めたが、
にぎわいづくりへの効果は未知数だ。