裁判官の立場に立てば、早期に主張と証拠の全体像を知りたいと考えるのが当然です。
そして原告の主張を説明し説得するにも、全体像を示した方が細切れの主張よりも、裁判官に理解しやすく説得力があるのがふつうです。
その上に、できる限り全体像を示し証拠も(隠し玉とか手の内をさらさないとかいわないで)早期に出してフェアな姿勢を見せることで裁判官の印象もよくなることが多いのですから、
私は、「最小限しか主張しない」「自分に主張立証責任があることしか主張しない」
「手の内をさらさない」などという弁護士のやり方は、そういうやり方をするのは自由ですが、今どきは依頼者のためにもならないと考えています。
また、私が弁護士になった頃は、民事裁判はとにかく時間がかかるものということで、弁護士は早さということはほとんど気にかけていなかったと思います。
主張立証責任があることしか主張しないという姿勢だと、一通りの主張が出るまでにやりとりする回数がどうしても多くなります。
今でも通常の民事裁判の口頭弁論期日(こうとうべんろんきじつ)や弁論準備期日(べんろんじゅんびきじつ)の間隔は1か月程度ですから、
準備書面による主張のやりとりが1往復増減するだけで裁判にかかる期間は約2か月増減することになります。
少しでも早い解決を考えれば、最初から(訴状から)全面展開が原則だと、私は思います(事実関係の確認や証拠書類の探索・確認等をきちんとするために2〜3週間遅くなっても、
最初からきちんとした訴状を出した方が、結果的には裁判は早くなると考えます)。