米政策にらみ株選別―ねじれ議会が重荷(スクランブル)
2018/11/09 日本経済新聞 朝刊

 株式市場では中間選挙後の米政策を巡って思惑的な売買が広がり始めた。超党派で取り組みやすいインフラ投資の関連株が日米の
市場で買われ、医療制度への高い支持を好感してヘルスケア関連株も高い。ただ米議会の膠着も予想され、政策をにらんだ物色は短命
に終わる可能性もある。
 「いくらなんでも下がりすぎ」。沖縄県在住の個人投資家surf777さん(ハンドルネーム)は、7日夜から8日にかけての日経平均オプシ
ョンの値動きで大きな損を出した。
 米議会が「ねじれ」になると相場が荒れると考え、中間選挙前には行使価格2万2000円のプット(売る権利)を買っていた。株価が下が
ると利益が出る取引だ。ところが、7日夕方に125円だったプットの価格は5円に急落した。
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 中間選挙を前にした投資家の緊張感は、高いプットの価格に反映されていた。選挙結果が出たことで安心感が広がり値下がりしてしま
った。7〜8日の日米株高は、選挙に備えてリスクを落としていた投資家が買い戻した側面が強い。持続力に疑問符がつく。
 2014年まで過去7回の中間選挙後、業種別日経平均に採用される銘柄の半年間の株価を分析すると、鉱業や鉄鋼、機械など景気敏
感株の上昇率が高かった。2年後の大統領選に向けて政権側が景気対策をうち、市場の関心が集まりやすいためだ。
 今回も景気敏感株が相場の上昇を主導するかどうか見方は分かれる。トランプ政権は景気が好調なのに大型減税を繰り出した。その反
動で19年以降は景気が減速するとの観測が強い。投資家は個別の政策の実現性と影響を、より精緻に見極めようとしている。
 インフラ投資はトランプ大統領も民主党も取り組みたい政策だ。地域や案件を限定して合意できるとの観測がある。8日の東京市場では
日立建機など建機株や太平洋セメントなど素材株が買われた。
 医療分野も焦点だ。医療保険制度改革法(オバマケア)は維持される公算が大きくなり、7日の米市場では保険株や医療機器株が上昇
。東京市場でも医薬株が買われた。ただ大統領と民主党は薬価の引き下げで方向性が一致している。政策の行方次第で医薬株には打
撃となりかねない。
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 米IT(情報技術)大手や、ソフトバンクグループなどには逆風が吹きそうだ。大統領も民主党もIT企業への規制や課税に前向きで「割高
な株価の調整が続く可能性がかなり高い」(米インベスコ)。
 中間層の所得減税が実現すれば自動車やゲームなど日本企業にも恩恵がありそうだが、簡単ではない。トランプ大統領は7日、財源と
して下げた法人税について、「少し調整する」と述べ引き上げを示唆した。
 「ねじれ」議会と財源問題に阻まれ、トランプ大統領の政策実現のハードルは高まった。「インフラ関連株買いも大統領選があった2年前
の二番煎じ」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券)。政策にらみの売買に、深追いは禁物だ。

米政策から恩恵・打撃を受けそうな銘柄   
〓〓〓 カッコ内は実現した場合の株価への影響 〓〓〓 
インフラ投資(+) オークマ、三菱マ、牧野フ 
中間層減税(+) SUBARU、ソニー、船井電 
金融規制緩和(+) 野村、三菱UFJ 
薬価規制(−) アステラス、武田 
IT規制(−) ソフトバンクG