金融、株高に踊れず―低金利・高齢化が重荷に(スクランブル)
2017/11/18 日本経済新聞 朝刊

 日経平均株価は乱高下しつつも、26年ぶりの高値圏にある。この上昇相場に取り残されているのが銀行や証券株だ。銀行の本業
である貸出金利の低下は一因にすぎない。債券ビジネスは不振が続き、顧客の高齢化で個人の株売買も盛り上がらない。欧州では
2018年から新たな金融規制が適用される。金融業界は久々の株高を喜べない構造問題にさいなまれている。
 17日の日経平均が小幅高で終えた市場で重荷になったのが金融株だ。みずほフィナンシャルグループ株は約1%安で引けた。13
日に17年4〜9月期決算で大幅な減益を発表してからさえない値動きが続く。
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 「右肩上がり(の成長)が期待できない。構造改革は待ったなしだ」。13日の電話会議でみずほFGの梅宮真グループ最高財務責任
者(CFO)が危機感をあらわにした。合わせて1万9千人に及ぶ人員削減を明らかにしたが、市場の視線は厳しい。SMBC日興証券の
中村真一郎シニアアナリストは「利益水準の低下による将来的な減配リスクがある」と指摘する。
 銀行株の低迷は数字が物語る。業種別東証株価指数で「銀行」の時価総額が全体に占める比率は約7%。金融不安が高まっている
わけでもないのに、日本の金融危機を象徴する03年のりそな実質国有化以来の水準まで落ち込んだ。
 それは市場で金融業が構造不況の業種と受け止められていることを示す。日本をはじめ先進国で長期化する低金利は、世界の債券
取引を干上がらせた。
 米国でもゴールドマン・サックスの債券トレーディングは不振が続く。原油など商品部門も「このままでは(1999年の)上場以来で最
悪の一年になる」(マーティン・チャベスCFO)。値動きの乏しい低温相場は売買の機会を生まないという意味で致命的だ。
 一方の株式相場は上昇基調だが、国内の証券株はつれ高となっていない。野村ホールディングスや大和証券グループ本社の今の
時価総額は前回高値の92年1月より2割以上減っている。
 「昔に比べて個人が個別株を売買することが極端に減った」。国内証券大手の幹部はこう語る。対面型の証券業界は顧客の多くが
70歳を超える。高齢化に伴い、相続などを意識してリスク資産の処分が進みやすい。今の株高は豊かな高齢者に格好の売りの機会を
提供している面がある。
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 18年には欧州で第2次金融商品市場指令(MiFID2)という規制が導入される。金融機関はアナリスト調査と売買執行を分け投資家
に費用を請求する必要がある。投資家が調査の支払いを渋るとの見方もあり、金融機関の収益減への懸念は強い。こうした規制が日
本を含むグローバルな潮流になる可能性もある。
 株高は時価の上昇を通じて金融機関の収益を押し上げる。ただその時価要因をはるかに超えた課題が山積している。現在の金融の
株価は、好業績を謳歌した08年の危機前の姿がもはや夢であることを映しているようだ。