世の中、不可思議なことが多い。
ことあるたびに何よりまず酒を勧め、強いて飲ませることを面白がるけれども、全く意味不明である。
飲まされる方の人が辛そうな顔つきで眉を顰め、人目を盗んで杯の酒を捨てようとしたり、飲まされまいと逃げようとするところを捕まえて引き留め、むやみやたらに飲ませたりすれば、立派な人であろうとあっという間に狂人のバカになる。
元気な人もだんだん重病人みたいになって、前後不覚で倒れて寝てしまうのだ。
それが当人の祝い事の日であれば、なおさらバカバカしいことだ。
次の日まで頭は痛み、物も食べられず、うめきながら寝込み、前世のことをまるで覚えていないかのように昨日の記憶も失くす。仕事や私事の大事な用事もできやしないので、差し障りも多いのだ。
人にこんな思いをさせることは、慈悲の心がなく礼儀にも背いている。
こんな辛い目に遇わされた人は、飲ませた人を忌々しく恨めしく思うに決まっているではないか。
よその国にこんなバカげた風習があると聞いたなら、酒を無理強いする風習がない国の人々は呆れて不思議に思うに違いない。

徒然草175段現代語訳

700年前だから、これw