米化学大手デュポンは9日、韓国で先端半導体製造に必要なフォトレジスト(感光材)を生産すると発表した。同製品は日本勢が世界シェア9割超を握り、日本政府が対韓輸出管理を厳格化した3品目の一つだ。韓国政府は半導体材料の国産化を掲げ外資企業の工場誘致を促しており、デュポンのような動きが増えれば日本企業の競争力に影響する可能性もある。

デュポンは韓国中部の天安市にある既存工場を増設し、「EUV(超紫外線)露光」と呼ばれる先端半導体の製造技術に用いられる高品質な感光材を生産する。まず2800万ドル(約30億円)を投じて量産技術を確立し、2021年にも量産投資に踏み切る計画という。顧客の発注量にあわせて生産能力を高める。韓国政府や自治体が土地の取得費用を負担し、税金免除などでも優遇する。

感光材は半導体製造に欠かせない重要材料。シリコン基板上に塗布し、特殊な光を当て回路パターンを形成する際に使う。東京応化工業やJSRなど日本勢が世界シェアの9割を握る。デュポンは半導体工場が集積する韓国で感光材を生産し、サムスン電子とSKハイニックスの世界大手との関係を強化する狙いだ。

日本政府は19年7月にEUV用感光材のほか、フッ化水素とフッ化ポリイミドという日本勢のシェアが高い半導体関連の材料3品目について、対韓輸出の管理を厳格化した。韓国政府は激しく反発し国産化を進めてきた。日韓対立の間隙を突く形で日本に競合する企業の韓国進出が続き、サムスンなど巨大な需要家の受注を奪われれば日本企業のシェアが低下する恐れもある。

日本企業の間では輸出管理が厳格化された当初から、日韓の政治対立が経済に悪影響を及ぼすことに懸念の声があった。デュポンと競合関係にある日本の素材大手の幹部は「デュポンの韓国内生産が実現すれば受注競争が激しくなる」と身構えている。
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