【ワシントン=河浪武史】米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は25日の講演で「金融政策は現在のスタンスが引き続き適切だとみている」と述べ、7月から続いた利下げを当面停止する考えを改めて強調した。トランプ米大統領はパウエル氏と直接会談して追加緩和を要求したばかりで、ホワイトハウスとFRBの路線対立は拭いにくくなっている。

パウエル氏は米東部ロードアイランド州での講演で「7月から10月にかけて政策金利を0.75%引き下げ、消費者や企業の心理改善に役立ったと信じている」と主張した。政策金利は現状が適切だと指摘した上で「先行きは政策効果を監視していく」と述べ、利下げを停止して当面は様子見に転じる考えを強調した。

パウエル氏は18日に、ホワイトハウスでトランプ大統領と今年2回目の会談に臨んだばかりだ。トランプ氏は会談後に「FRBの政策金利は他国に比べて高すぎると抗議した」と明かし、追加緩和の要求を緩めない考えを強調している。25日のパウエル氏の講演は、FRBがホワイトハウスの露骨な政策介入に抵抗する姿勢を示したものだ。

もっとも、パウエル氏は講演で「貿易問題と海外景気の減速で、企業投資は弱含んでいる」などと述べ、米景気の下振れリスクも引き続き指摘してみせた。物価上昇率が目標の2%を下回っていることも懸念して「景気見通しに変化があれば、政策も同時に変更する」と述べ、機動的に追加緩和を検討する考えも強調した。

2019/11/26 9:03
日本経済新聞
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