<韓国でユーチューブ「一人放送」が拡大している。10人に4人が「一人放送」を行っているか計画中という......>

韓国で「一人放送」の人気が高まっている。個人で動画の撮影と編集を行い、ユーチューブで発信する手引き書がベストセラーとなり、関連機材の売上も大幅に伸びている。

オンラインショッピングモールGマーケットのアンケート調査で、10人に4人が現在一人放送を行っているか計画中と回答する一方、ユーチューバーへの課税が新たな課題として浮上してきた。

「一人放送」関連書籍はベストセラー
インターネット通販大手のインターパークが2019年1月から9月に販売した書籍を分析したところ、「一人放送」関連書籍が、前年同期と比べて82%増加していた。18年度のコンピュータ関連書籍のベストセラーはビジネスマン向けエクセル本だったが、今年は人気ユーチューバーが著した手引き書が1位となり、ベストセラー上位10冊のうち4冊を「一人放送」関連書籍が占めていた。購入層は30代が61%、20代が31%、10代が3%などとなっている。

韓国メディア・デザイン専門就職ポータルのMJフレックスが行ったアンケートで、10人に7人が退勤後の7時からユーチューブを視聴し、8割が一度見はじめると30分以上視聴と回答するなど、ユーチューブ視聴者が増加するなか、自ら発信する人の増加も著しい。カメラや音響、照明、撮影時にブレを軽減するジンバルなど動画用機器の製造販売を行うメーカーや販売会社が「一人放送」機材の開発と拡販に力を入れ、Gマーケットが集計した関連商材売上は、前年同期比11倍以上だ。

消費者も企業も意識が変わった
ユーチューブ人気が高まっている背景のひとつに消費者意識の変化がある。メーカーなど販売者が発信する情報は虚偽や誇張があると考え、第三者の情報を求める消費者が少なくないのだ。企業側は人気が高いパワーブロガーに対価を払って商品紹介を依頼してきたが、動画の方がより深く浸透する。ユーチューバーが商品紹介を発信し、登録者が増えると広告主からの依頼に繋がるのである。

そして、企業もユーチューブを活用する。韓国の小売店は認知度が高い"売れ筋"商品を販売する。販売者がコンビニエンスストア本部に数千万ウォンを払い込んで納入契約を締結したとしても、実際の販売商品は加盟店が決定するため、認知度の低い商品が店頭に並ぶことはない。そこで企業はユーチューブで発信し、通販サイトに誘導する手段を選ぶ。

政府の各部処もユーチューブ・チャンネルの運営を開始
政府や自治体もユーチューブに注目している。ソウル市は海外のインフルエンサー5人にグローバル広報大使を委嘱した。タイ、中国、米国、デンマーク、ベトナムのインフルエンサーで、5人のユーチューブ・チャンネルの登録者は合わせて1000万人を超えている。広報大使は観光スポット等を紹介する動画に出演し、それそれのユーチューブ・チャンネル等で公開する計画で、市は2億回以上の再生を期待している。

日本の省庁に相当する政府の各部処もユーチューブ・チャンネルの運営を開始した。文在寅大統領がユーチューブの重要性が高まっていると話したことを受けて取り組みをはじめたが、18部処のチャンネル登録者数は平均1万8000人で成人男女の0.04%にとどまっている。

雇用労働部や環境部が発信した長官の動向を伝える動画はレスポンスがなく、教育部長官の動向を伝える動画のレスも教育部を批判する内容だった。各機関が民間ユーチューバーと合作し、人気を呼んだ動画もあるが、独自で企画した動画は人気がなく、効果がないと指摘する声が上がっている。

韓国で反対意見を述べる場は限られる......
韓国では自身を露出することに抵抗を感じない若者が多く、商品紹介や広報のほかに意見を主張するスタイルの「一人放送」も増えている。7月以降、日本製品の不買運動が広がっている一方、運動を批判する人たちもいるが、韓国で反対意見を述べる場は限られる。

あるユーチューバーは、不買を主張する前に日本製部品が多く使われているスマートフォンを捨てるべきなどと運動を皮肉る動画を発信した。不買推進派と反対派がいずれもユーチューブで自らの主張を述べているのである。

https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/10/post-13214_1.php