NTT東日本があらゆるモノがインターネットにつながる「IoT」や「AI(人工知能)」を活用した農業ビジネスに乗り出す。NTTグループで初となる農業法人を7月に設立。ガラス室やビニールハウスなどを利用して農産物を栽培する「施設園芸」の次世代拠点を自ら運営してICT(情報通信技術)を用いた生産、販売、物流、労務管理などのノウハウを蓄積し、他の農業法人にソリューションとして一括提供する。自治体なども巻き込み、農作物の流通拡大の経済効果を関連産業に波及させ、地域経済の活性化や街づくりに貢献していく考えだ。

 農業法人「NTTアグリテクノロジー」は資本金4億円で、NTT東の全額出資で設立した。山梨県中央市内に約1ヘクタールの施設園芸の実証ファームを設置し、2020年内に葉物野菜の栽培を始める。

 ハウス内にはIoTカメラやセンサーなどが設置され、野菜の光合成を促す温度や湿度、日射量、二酸化炭素量などの環境を最適制御する。さらに、生育状況をAIで分析し、収穫量の予測を行うことで、従業員の配置やトラックの手配を効率的に行うほか、スーパーマーケットなどの出荷先に的確な収穫予測を通知して販売機会損失の抑止にもつなげる。

 「ソリューションを提供しますというだけだと、生産者の思いや課題に入り込むことは難しい」と、NTTアグリテクノロジーの酒井大雅社長は指摘する。農業法人を立ち上げて自ら生産に乗り出すのは、実際の生産性向上や省力化の効果、投資対効果を生産者と同じ目線で検証し、磨き上げた上で提案しなければ生産者には響かないとみているからだ。

 一方、ICTを活用した次世代施設園芸をめぐっては、農水省も拡大方針を掲げている。自治体は雇用や関連産業の創出、増加傾向にある農業法人も経営の規模拡大や経営安定化を図る上で期待を高めている。

 もっとも、「(農業法人からは)ICTを導入するには機器だけではなく、施設の設計や労務・生産管理なども含めたトータルの提案がないと使いこなせないとの声が強い」と酒井氏は語る。
https://www.sankei.com/economy/news/191014/ecn1910140001-n1.html