ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長は18日、東京都内で講演し、「日本はいつの間にか人工知能(AI)後進国になってしまった」と述べた。運用額10兆円規模の「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」が投資する東南アジアやインドの企業はAIを活用して急成長していると紹介。日本企業は「目覚めないとやばい」と強調した。

法人顧客向けの行事「ソフトバンクワールド2019」で登壇した。インドの格安ホテル運営会社OYO(オヨ)や、配車サービス大手のグラブ(シンガポール)などがAIを使って事業モデルを革新している例を紹介した。

例えばオヨはAIを活用して、1日当たり5000万件の客室の価格を調整をしたり、インテリアデザインを改善して客室の稼働率を向上したりしているという。孫氏は「オヨの創業者はまだ25歳。これから数カ月で世界最大のホテル王になる」と持ち上げた。

一方、日本では「一番大事な技術革新の時期にAIを中途半端に扱っている」と指摘。ただ、まだ手遅れではないという。「インターネット革命が始まった頃にはグーグルもフェイスブックもなかった」として日本政府や学者、知識人、ビジネスパーソンに意識改革を求めた。

ビジョン・ファンドのこれまでの投資先に日本企業がないことについて「日本には人工知能(AI)のユニコーン企業がまだないのが現実。投資したくてもなかなかチャンスがない」と述べた。

孫社長は「AIの一番得意なことは予測だ。何でもかんでもやらせるべきではない」とも指摘。需要と供給を適切に予測することで、ビジネスでは在庫の回転率や販売効率の劇的な改善が期待できると説明した。

「データを基に人工知能(AI)が推論することで、人間の進化は加速する」とも紹介した。自動運転や、あらゆるモノがネットにつながるIoTを通じ「今後30年で世界のデータは100万倍に拡大する」と強調。膨大なデータをAIで分析することがすべての産業に変革をもたらすとした。
2019/7/18 11:13
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO47467590Y9A710C1I00000/