昭和29年に創業した甲府駅前の山交百貨店が9月30日、閉店することになった。店舗1階の出入り口に1日、「営業終了のお知らせ」を掲示した。客の減少や郊外のショッピングモールなど他の大型店との競合が激化。減収減益が続き、収支改善の見込みが立たないと判断した。

 同社の桐谷典明常務は「平成元年に建て替えて、平成とともに終わる。感慨深いものがあります」と話した。地元客だけでなく、駅を利用する旅行客などの利用も多かった。甲府の玄関口からにぎわいが一つ消えることになる。

 創業65年の同社の前身は「甲府松菱」。昭和36年7月、国際興業グループに入り、40年11月に今の商号に変更した。婦人服、紳士服など衣料、食品、雑貨などを扱う。

 店舗は甲府駅南口ロータリーに面し、地上5階、地下4階。延べ床面積3万9383平方メートル、売り場面積1万6445平方メートル。ピーク時に100店を超えたテナントは現在、67店に減っている。

 桐谷常務は「大型店やネット通販、東京の商圏との競合で売り上げが減り、10年余にわたり減収減益が続いた」と説明した。

 さらに、「テナントの出店要請を続けても、駅前の通行量の少なさなどから出店に二の足を踏む店が多く、打開できなかった」と振り返った。

 同社は売上高など業績は非公開。百貨店、外商からは撤退するが、保険販売、不動産賃貸事業は継続する。

 従業員数は社員35人、パートなど76人の計111人。配置転換、早期退職を進めるほか、グループ会社などへの再就職を支援するとしている。閉店後の土地と建物をどうするかは未定という。

 正面出入り口のお知らせは、内田賢一社長名で感謝とおわびに加え、「店舗営業の終了まで従業員一同、誠心誠意取り組んでまいります」と記されていた。

 買い物に訪れた市内の80代の主婦は、「駅前にあって、買い物だけでなく、レストラン街で友人と食事をするなど思い出がある。閉店はとても残念」と話した。
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