あと6円67銭――。1日の東京株式市場では日経平均株価が節目の2万円割れギリギリに迫った。米景気減速への不安から前日の米株式相場が大幅下落したところにマティス米国防長官の辞任報道が重なり、日産自動車のカルロス・ゴーン元会長再逮捕というニュースも加わった。不透明感を嫌った海外勢の売りが主導し、日経平均は4日続落。連日での年初来安値更新となった。

終値は前日比226円39銭(1.11%)安の2万0166円19銭。午後には日銀による上場投資信託(ETF)買い入れの思惑などを支えに下げ幅を縮小する場面もあったが、4日間の下げ幅は1300円を超える。リスク許容度が低下した海外勢が日本株を売却。外国為替市場では安全通貨とされる円が買われ、1ドル=111円台前半まで円高・ドル安が進んだ。

「日本株について海外勢からの問い合わせが減ってきた」。JPモルガン証券の阪上亮太チーフ株式ストラテジストは嘆く。海外勢の日本株への関心低下を裏付けるかのように21日の東京市場はトヨタ自動車やパナソニックが3%安となるなど主力株が軒並み下げた。

日本だけではない。一般に高値からの下落率が2割を超えると「ベア(弱気)相場」入りとされるが、欧米各国の主要株価指数が最近相次ぎこの節目に近づいている。

ドイツ株価指数(DAX)は1月につけた高値比で22%安、イタリアのFTSE・MIBは5月高値比で24%下落した。20日には米ナスダック総合株価指数も一時、2割超下落。中国やトルコ、韓国などは既に軒並み2割以上下落している。投資マネーが株式から逃げ始めており、調査会社EPFRによれば、先進国の株式ファンドからは5週連続で資金が流出。流出額は累計659億ドルに上った。

個別株でみても似た状況だ。QUICK・ファクトセットを使って世界の時価総額上位1000社を対象に調べたところ、546社が過去1年の高値から2割以上下落した。ゼネラル・エレクトリック(GE)が6割超下落したほか、半導体のエヌビディアも5割強下落した。

背景にあるのが世界景気の減速懸念だ。米PIMCOは「2019年に世界経済の同時減速」がはじまると予測。米国が1年以内に景気後退入りする確率は30%に高まったとはじく。にもかかわらず、米連邦準備理事会(FRB)は19日、利上げ路線を堅持する考えを強調。市場の警戒感と逆行し、FRBの対話能力に疑問符がついた。

世界景気を下支えしてきた日米欧英の中央銀行による流動性供給は19年に吸収額のほうが多くなる見通し。「次に景気減速が進む局面で中銀に頼ることができないことも市場の不安感を増幅している」(ニッセイアセットマネジメントの三国公靖上席運用部長)

世界を見渡すと不安材料には事欠かない。英国で欧州連合離脱を巡る混乱が続くほか、フランスではデモが続き、イタリアは債務問題を抱える。シティグループ証券の村嶋帰一エコノミストは「景気減速が続く中国の影響が欧州に出始めており、欧州景気は厳しい状況が続く」とみる。

米中貿易摩擦も足を引っ張る。中国が米国車への追加関税を一時停止するなど譲歩の動きもあるが産業政策そのものを改めるのは難しく衝突は続く可能性が高い。「緊張感の高まりが投資家のリスク許容度を下げる」(ブラックロック・ジャパンの福島毅チーフ・インベストメント・オフィサー)悪循環に陥っている。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39251510R21C18A2000000/