https://jp.reuters.com/article/column-turkey-idJPKCN1LT3HZ

外為フォーラムコラム
2018年9月14日 / 01:45 / 2日前
コラム:トルコ、大幅利上げでも政府への不安が消えない訳
Neil Unmack
[ロンドン 13日 ロイター BREAKINGVIEWS] - トルコの常識の発露には限界がある。中央銀行は市場の予想よりも大幅な利上げに踏み切り、エルドアン大統領の反対を押し切って独立性を保ったという意味で喜ばしい兆しが見えた。これで通貨危機は回避できるかもしれない。だが政府に内在する脆弱性は消えることはない。

この日まで中銀は全面的な通貨の暴落を避ける上で無力な存在とみなされてきた。通貨リラは、トルコの経常赤字拡大や多額の外貨建て債務への懸念、全般的なドル高を背景に、今年に入って対ドルで40%余りも値下がりしてきた。そしてエルドアン氏が「(高)金利の敵」を自称し、トランプ米大統領とも外交的に対立して米国から制裁を科されたことで、本来混乱していた状況を危機へとエスカレートさせてしまった。13日の利上げ発表直前にはエルドアン氏が中銀不満のボルテージを一段と高める発言をしたため、中銀の受け身的な印象が増した。

ところが中銀は今、遅ればせながらも期待された役割を果たしつつある。今年の予想物価上昇率の20%より低い17.75%だった政策金利を一気に6.25%ポイント引き上げ、24%にしたのだ。これで実質金利は3%超となったことを意味し、ソシエテ・ジェネラルのアナリストチームが通貨安定に必要と提言した水準に達した。

リラ相場が持ち直したのに伴い、トルコはさらなる危機を免れ、国内の銀行や企業は外貨建て債務の借り換えができるかもしれない。トランプ氏の政治基盤が中間選挙で弱まれば、米国との関係も改善する可能性がある。

それでも足元の平穏さは、見せ掛けだけなのではないか。中銀が適切な行動をしていることで、エルドアン氏の振る舞いがますますおかしくなるリスクが出てくる。同氏は来年3月の地方選を控えて歳出拡大を求めたり、あるいは米国との関係をもっと悪化させる事態もあり得る。

そうした中銀と政府がそれぞれ「良い警官」と「悪い警官」の役回りを演じ続けるのは、ますます難しくなるだろう。経済成長率は既に、昨年の7%から今年は3%まで減速が見込まれている。経済が一層下振れすれば、中銀と政府のあつれきが強まり、金融政策の選択肢が制約されかねない。中銀が「バズーカ」を撃ったのは正しかったが、残った弾は限られている。

●背景となるニュース

*トルコ中銀は13日、政策金利の1週間物レポ金利を6.25%ポイント引き上げて24%とした。

*1週間物レポ金利は、通貨リラの下げを防ぐ狙いで4月以降で計11.25%ポイント引き上げられている。

*エコノミストが予想していた利上げ幅は2.25─7.25%ポイントだった。

*利上げ発表を受けてリラは対ドルで急伸した。