2018/9/13 0:37 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO35300040T10C18A9MM0000/

 【ブリュッセル=森本学】欧州連合(EU)のユンケル欧州委員長は12日、EU加盟国が一律採用している「夏時間」の制度を2019年に廃止する法案を欧州議会と加盟国に正式提案した。7〜8月に欧州委が実施したパブリックコメント(意見公募)で84%が廃止を支持したのを受け、見直しに踏み切る。現行の「夏時間」と「冬時間」のどちらを通年適用する標準時間にするかは、加盟国の判断に委ねる。

 EUの夏時間制度は加盟28カ国すべてを対象に、3月の最終日曜日に時計を1時間進めて夏時間とし、10月の最終日曜日に標準時間(冬時間)へ戻す仕組み。廃止の実現には、欧州議会と加盟国の承認が必要となる。

 円滑な廃止を実現するため、欧州委は加盟国に19年4月までに夏時間と冬時間のどちらを通年適用するか、最終判断を通知することも求めた。廃止を急ぐ背景には、19年に退任するユンケル氏が任期中の「成果」にしたいとの思惑がにじむ。

 欧州委が12日発表した意見公募の詳細結果では、「廃止」を支持した回答者のうち43%が健康への悪影響、20%が省エネルギー効果の乏しさを理由にあげた。加盟28カ国のうち夏時間の「継続」が多数だったのはギリシャとキプロスだけ。フィンランド、ポーランド、スペイン、リトアニア、ハンガリーでは9割以上が「廃止」を支持した。

 日本では20年の東京五輪・パラリンピックに向け「暑さ対策」として、夏時間の導入の是非の検討が進む。しかし40年以上にわたって定着していた欧州は逆に廃止へ向かっている。