>>44
 今、世界的に合成ホルモン剤が残留している牛肉に対する輸入禁止措置が広がっている。

 EC(欧州共同体)は1989年からホルモン剤の残留している牛肉の輸入を禁止し、米国政府
といわゆる「ホルモン戦争」を継続している。ロシアは昨年、合成ホルモン剤が残留してい
るオーストラリア産牛肉の輸入を禁止した。また、中国政府は香港経由の合成ホルモン剤残
留米国産牛肉の輸入を禁止し、それによって米国産牛肉の国際価格低下を招いていると報道
されている。牛肉を宗教上の理由で輸入禁止しているインドを加えると、合成ホルモン剤残
留牛肉が国内に流通していない国の人口合計は32億7942万人に上り、世界人口の45%にも及
んでいる。
 
 こうした状況のなかで、先進国で最大の残留ホルモン剤汚染牛肉の輸入国が、日本になっ
ている。昨年の日豪FTA合意で合成ホルモン剤汚染オーストラリア産牛肉の輸入量も増加して
いる。さらに、TPP交渉では、牛肉関税の一層の引き下げも報道され、日本国民は否応なしに、
合成ホルモン剤汚染牛肉の消費を押し付けられているのである。

 輸入牛肉の残留ホルモン剤問題は深刻である。2009年10月24日に開催された第47回日本癌治
療学会学術集会で北海道大学の半田康医師は、「牛肉中のエストロゲン濃度とホルモン依存性
癌発生増加の関連」を発表した。この研究目的は以下の通りである。

「わが国において乳癌、前立腺癌を含むホルモン依存性癌は急速に増加しているが、これに並
行するように牛肉消費量も増加している。国内消費量の25%を占める米国産牛肉では、肉牛の
飼育時に成長促進目的にエストラジオールを含むホルモン剤の投与が行われる。米国の牛肉消
費量は先進諸国で最多で増加傾向にあるが、癌発生数は乳癌、前立腺癌が極めて高い。このた
め、牛肉に含まれるエストロゲン濃度を検討した」

 半田氏は「わが国とアメリカの牛肉消費傾向から、エストロゲン高濃度の牛肉摂取とホルモ
ン依存性癌発生増加の関連性が考えられる」と結論付けている。