朝日新聞が全国の地方銀行に実施したアンケートでは、超低金利や人口減で先行きが厳しい状況が鮮明になった。店舗や人員の削減といったリストラを検討する銀行もある。そうした中で、証券子会社や合併・買収(M&A)などの助言会社を設立するなど、新たな業務で収益を上げようとする動きも出てきた。

今回のアンケートで収益拡大策について聞いたところ(複数回答)、「手数料ビジネスの拡大」(71行)、「ITによる効率化」(70行)が目立った。

 地銀が貸し出し以外の収益を増やす工夫として近年、目立つのが証券子会社をつくる動きだ。3月末時点で20行以上が証券子会社を傘下に持つ。北洋銀行(札幌市)は10月に地場証券を完全子会社化する。包括的業務提携を交わしている十六銀行(岐阜市)と東海東京フィナンシャル・ホールディングス(東京)も2019年度に証券子会社の開業を目指す。

 銀行は投資信託や保険など扱える金融商品が法律で限定されているが、証券会社は株式など幅広い金融商品を販売できる。グループに証券子会社を持つことで、こうした商品の販売手数料の拡大を期待する。

 また、鹿児島銀行と肥後銀行(熊本市)を傘下に持つ九州フィナンシャルグループ(FG)が4月に本格開業した証券子会社は、地元企業の新規上場支援を目指す。上場後の資金調達を担うことも期待できる。

 経営計画の策定やM&Aの助言業務に力を入れる地銀もある。七十七銀行(仙台市)は7月、企業へのコンサルティング機能を備えた子会社を開業した。

 野村総合研究所・金融コンサルティング部の鳩宿潤二部長は「どれだけ地元企業の成長に貢献できるかが問われている。規模の大小ではなく、行員のこうした能力を伸ばし、業種を特化するなど差別化が重要だ」と話す。

 ただ、銀行の経営の柱は貸出金利による収益だ。日本銀行は大規模緩和の開始から5年でようやく、一定の金利上昇を容認する政策修正に踏み切った。しかし金融界では、今後も緩和は長期化し、収益へのプラス効果はほとんど見込めないとの見方が目立つ。

 超低金利で銀行経営が悪化すれば、リスクがある貸し出しを控え、経済にも悪影響を与えかねない。店舗や人員の削減が続けば、地域の金融サービスや雇用にもマイナスだ。アベノミクスが地域経済に及ぼす影は、徐々に無視できない状況になってきている。
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