ネガティブなイメージで語られがちな「団地」という住まい。しかし近年はイケアや無印良品とコラボしたオシャレな物件を提案し、新たな魅力を生み出しているようだ。変貌しつつある団地の最新事情に迫った。

7月28日に最終回を迎えた土曜ドラマ「限界団地」(フジテレビ系)で描かれる「団地」は、不気味な存在感を放っている。佐野史郎演じる「寺内さん」が引っ越してきたところから物語は始まり、一癖も二癖もある団地住民たちの闇が徐々に明らかになるというストーリーなのだが、ドラマの舞台となっているのは1970年代に建てられ、当時は庶民の憧れの存在だったという設定の団地だ。

 同作品のメインポスターでは、背景に陰鬱な雰囲気をまとった団地が連なっており、まるで事件現場のような陰々滅々とした住まいという印象を与える。

 そもそも平成の世にあって、「団地」という単語にポジティブな印象を持つ人は、どのくらいいるだろう。恐らくそう多くはないのではないか。

 これはあくまで団地で生まれ、二十数年を暮らした筆者自身の体感なのだが、時に「団地住まい」とは貧困や弱者という記号的イメージを与えてしまうことがあるように感じる。実際、筆者を含め、団地内の同級生たちは決して裕福な家庭ではなかった。しかしそんな団地が、近年は目覚ましい進化を遂げているのをご存じだろうか。

「団地は高齢者が住んでいるもの、そんなイメージを持っている方も多いかもしれません。しかし最近は20〜30代の若夫婦、ファミリー層や学生さんにも多くご利用いただいています」

そう語るのはUR都市機構の営業推進担当・坂下さん。吉岡里帆が「ユーアールであーる♪」と軽やかに歌うCMも、団地のイメージを明るいものに変化させた一つだ。明るく、緑にあふれ、コスパもいいという印象を視聴者に与えた。

 ストック活用計画担当・坂田さんによると、近年の団地は若年層を取り込むための様々なプロジェクトを行っているのだという。

「団地というと、どうしても高齢者ばかりというイメージが先行してしまうので、その刷新のためにも若い方に人気な『無印良品』、『イケア』等の民間企業とコラボし、新しい団地の魅力を打ち出しています」

 無印良品とのコラボではフルリノベーションではなく、あえて団地の味わいを残すことにこだわった。というのも無印良品が団地についてのアンケートを一般の人に実施したところ、「自分で改装できるといい」という回答が多かったのだ。一部をURが改装すれば、あとは住む人が自由に、自分好みの部屋を作り上げる楽しみを持てるというわけだ。

「当初、フルリノベをするという考え方もあったのですが、無印良品さんが古いところを残しましょう!と(笑)。『MUJI×UR団地リノベーションプロジェクト』は、団地の良さを見直し、生かしながら新しい賃貸住宅を造ろうというコンセプトなので、たとえば年月を重ねて風合いを感じられる柱や鴨居は残し、押し入れはふすまを外して大きな収納に。レトロな雰囲気を出せるドアの取っ手なども、そのままにしています。」

その一方で、畳は麻畳、台所はカウンターキッチン等に変更。白を基調に、シンプルで清潔感のある“無印”流のたたずまいも忘れていない。コストを抑えつつ、「組み合わせキッチン」や「麻畳」など、共同開発した商品も誕生させた。

 完全に団地の色を消すのではなく、新しい魅力を作る。近年、古民家など味のある物件に注目が集まっているように、新旧織り交ぜたその絶妙なバランスが若い世代の取り込みにも一役買っているようだ。それはイケアとのコラボレーションでも同様である。

「『イケアとURに住もう。』プロジェクトでは、デザインと機能性を兼ね備えたイケアのキッチンを採用した住戸を提供しています。 例えば 、北欧の家庭を訪れたかのようなカントリー調のキッチンを採用する等して、多様なニーズにマッチするようなキッチンスペースとなるように工夫しています」
https://diamond.jp/articles/-/176908