米インターネット通販大手アマゾン・コムが独立系映画館チェーン米最大手ランドマーク・シアターズの買収合戦に名乗りを上げたことが関係者の話で明らかになった。買収が実現すれば、食品小売り事業などに続き、映画分野でも、実店舗への展開が進むとみられる。

 ランドマークは富豪で実業家のマーク・キューバン、トッド・ワグナー両氏が支援する企業が所有している。関係者によれば、両氏は売却の可能性を視野に、投資銀行スティーブンスと連携している。ただ最終決定は下されておらず、買収協議が白紙に戻る可能性もまだある。キューバン氏は4月に米映画誌ハリウッド・リポーターに対し、買収提案を審査するために金融機関1社を採用したことを明らかにしていたが、その時点では「慌てて売却する気はない」と話していた。

 アマゾンはネット通販の買い物客をプライム会員に勧誘するとともに、既存会員の契約の継続率を高める狙いで、毎年莫大(ばくだい)な額を映画やテレビ番組に投じてきた。映画やテレビ番組の制作スタジオ、音楽サービスなど多種多様なメディアへと事業を拡大しており、映画館チェーンへの参入はこれに続くものだ。

 1974年設立のランドマークを買収すれば、アマゾンは自主制作映画と海外映画を重点的に上映する映画館チェーンを手に入れることになる。ランドマークはニューヨークやロサンゼルスなどの主要都市をはじめ、全米で50館以上の映画館を擁する。

 今回は少額での買収となる可能性が高いものの、アマゾンの実店舗戦略は大きく前進しそうだ。昨年は米高級自然食品スーパーのホールフーズ・マーケットを137億ドル(約1兆5180億円)で買収し、同社を食品販売を増やすキャンペーンの中心に据えたことで、スーパー業界に大きな影響を与えた。(ブルームバーグ Anousha Sakoui、Nabila Ahmed)
2018.8.17 06:00
https://www.sankeibiz.jp/macro/news/180817/mcb1808170600012-n1.htm