→出口政策と取られかねないとしてオペ中止は困難ー関係者
→社債オペは2月以降、落札レートがマイナス続き、購入額は7500億円

日本銀行が異次元緩和の一環として、社債オペレーションでマイナス金利で買い取ってきたことを不服だとして、金融機関が非公式に日銀に対し、これを中止するよう求めていることが、事情に詳しい複数の関係者の話で分かった。銀行の貸出金利に低下圧力が掛かるのが理由だという。
  関係者らによると、銀行の間で不満が高まってきたのは、日銀が2月以降のオペでマイナス金利で社債を購入し続けてきたためだという。社債利率の低下に伴い、銀行の間では、競争上貸出金利を一段と引き下げる必要が出てくる可能性があり、収益減につながるとして、懸念が生じてきたと関係者らはみている。

  しかし、日銀はジレンマに直面している。3.2兆円規模の社債購入は異次元緩和全体のごく一部を占めるに過ぎないものの、これを取りやめにすると、投資家の間では日銀が出口政策を模索しているとの思惑を呼び、金融市場の不安定化につながる恐れがある。銀行の不満が高まっているにもかかわらず、複数の日銀当局者らは、社債オペに物価押し上げ効果があるか懐疑的だとしても、市場へのインパクトを懸念して社債買いオペの政策変更は適切ではないと考えているという。

  日銀広報は、社債オペについてコメントを控えた。

  前日銀審議委員の木内登英氏(野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミスト)は、日銀の社債オペについて「止められないから続けているだけであって、続けていることによる効果はほぼ信じていないと思う」と指摘。仮に日銀が社債購入策を打ち切ったり、目標額(3.2兆円)を引き下げたりすれば、投資家は「正式な正常化」の開始と受け止め、円高をもたらす可能性があるという。

■副作用軽減

  金融機関が水面下でこうした動きを見せているのは、日銀に対して超金融緩和策を修正するよう圧力が高まっている兆候と言える。日銀は決定会合を30、31日に控え、市場機能の低下や金融機関の経営に及ぼす悪影響など、超金融緩和の長期化で累積する副作用を軽減する方策を模索している。ブルームバーグの調査(17−20日実施、エコノミスト44人対象)によると、全員が金融政策の現状維持を予想したが、半数以上が来年のいずれかの時点で引き締めに転じると回答している。

  全国銀行協会の藤原弘治会長(みずほ銀行頭取)は5月の会見で、強力な金融緩和措置がこれからも長く続けられた場合、金融システムへの副作用が生じるとし、「過度な副作用が確認できるのであれば、やはり政策変更を検討すべきだ」と表明していた。また三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)の平野信行社長は25日、ニューヨークでのインタビューで、日本経済は改善しており、「2%のインフレ目標を維持する必要があるかどうかが問題だ」と述べた。 

  異次元緩和の下で銀行の収益は悪化。大手行の貸出金利ざやは黒田東彦・日銀総裁が13年に就任以降、縮小傾向が加速し、一時過去最低の0.83%をつけた。

  また、日銀による社債買いオペの落札平均レートは2月、マイナス0.049%となって以降、マイナスが続き、買い入れ額は7500億円に達した。ゼロに近い超低利の社債でも投資家はオペに応札すれば、利益を得られるので人気があり、発行企業からみると起債コストを引き下げられる。企業が銀行と資金借り入れを交渉する際に、社債の超低利発行は良い条件を引き出す「バーゲニングの材料になりうる」と、大和証券の大橋俊安チーフクレジットアナリストは話す。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/ip5B_KxOqC88/v0/400x-1.jpg

Bloomberg
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-07-25/PCCOUS6K50XX01