東京外国為替市場で円は主要16通貨に対して全面高。イタリアなど南欧政治不安を背景に、
リスク回避の円買いが優勢となった。ドル・円相場は米長期金利が低下する中で1ドル=109円台を割り込み、
ユーロ・円相場は約11カ月ぶりの水準までユーロ安・円高が進んだ。

  29日午後3時35分現在のドル・円は前日比0.5%安の108円92銭。
朝方に付けた109円47銭から水準を切り下げ、一時108円85銭と8日以来のドル安・円高水準を付けた。
この日は5月の月末応答日に当たり、輸出企業の実需売りも観測された。

  NBCフィナンシャル・マーケッツ・アジアのディレクター、デービッド・ルー氏(香港在勤)は、
「ドル・円相場はイタリアやスペインなど欧州周縁国の政治リスクを意識したリスクオフで円高になっている。
それに伴い米長期金利も低下しており、ドルそのものも重い動きになっている。
また、月末ということもあり、実需による円買いもドル・円の押し下げ要因になっている」と説明した。

  米長期金利はこの日の時間外取引で一時5ベーシスポイント(bp)低下の2.882%と
4月19日以来の低水準を付けた。米セントルイス連銀のブラード総裁は29日、東京で講演し、
米金融政策はすでに中立に近い状態とした上で、
「今後の合理的な政策は正常化のペースを緩めるというものかもしれない」と述べた。

  三井住友銀行の宇野大介チーフストラテジストは、
「米実質国内総生産(GDP)が平均2%の中で、名目長期金利3%前後は高いイメージがある。
米国の金融政策は、中立金利や利上げ停止の観測が出てくる流れ。
米連邦準備制度理事会(FRB)の長期的な見通しで年4回利上げは立ち消えになり、
利上げ回数を減らしていく方向で収れんすると思う」と分析。
「ユーロ絡みの材料で、ユーロ・円の動きが間接的にドル・円に多少影響があるかもしれない」とも語った。


  ユーロ・円相場は同時刻現在、0.6%安の1ユーロ=126円37銭。
一時126円29銭と昨年6月27日以来のユーロ安・円高水準を付けた。
一方、ユーロ・ドル相場は0.2%安の1ユーロ=1.1604ドル。
一時1.1599ドルと昨年11月9日以来のユーロ安・ドル高水準を付けた。

  イタリアのマッタレッラ大統領は28日、
元国際通貨基金(IMF)財政局長・エコノミストのカルロ・コッタレッリ氏に再選挙までの暫定政権の組閣を委ねた。
ポピュリスト政党は連立政権樹立失敗について大統領批判を強めており、早ければ秋にも選挙となる可能性がある。

  三井住友銀の宇野氏は、「イタリアは下手したら総辞職・総選挙になり、政局の終わりがみえない状況。
ポピュリズム政党が強く、財政支出・減税などにより、イタリア国債利回りが上昇し、逆回転が続く」と指摘。
ユーロ・ドルは、「昨年11月7日安値1.1554ドルが下値めど」と語った。

  一方、クレディ・アグリコル銀行の斎藤裕司外国為替部長は、
「1番の注目は月末のポートフォリオリバランスで、今までユーロに対するドル買いがすごかったので、
リバランスをするとその逆の動きになる。ユーロのショートカバーに気を付けないといけない」と述べた。

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Bloomberg
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