米半導体業界が好決算に沸いている。マイクロン・テクノロジーやウエスタンデジタル(WD)など半導体メーカーの直近の業績は相次いで予想を上回った。半導体各社の業績はこの10年間、アップルの製品サイクルに翻弄されてきた。アップルのスマートフォンの主力モデル「アイフォーンX」の販売が不振だったにもかかわらず、快進撃の背景には何があるのか。

データセンター構築

好調の原動力となっているのが、アマゾン・コムやグーグル、フェイスブックといった大手IT企業のインフラ投資だ。大手IT各社は小売業、検索エンジン、クラウドサービス、ソーシャルネットワークをインターネット上で運営するために、巨大なデータセンター・ネットワークの構築に多額の投資を行っている。データセンターに最も必要なのは、高速処理とデータ保存のための高性能半導体だ。半導体メーカーにとっては、ターゲットにしてきたスマホ市場が飽和状態の様相となっているだけに、こうしたインフラ投資は“渡りに船”といえる。

中でも、クラウド・インフラストラクチャーへの投資が急増している。昨年、アマゾンやグーグル親会社のアルファベット、フェイスブック、マイクロソフトが施設や装置に投じた額は合計約400億ドル(約4兆3850億円)に上る。その大半が、データセンター関連の投資だった。ブルームバーグがまとめたアナリスト予想によれば、これら大手ハイテク企業による今年のインフラ投資は580億ドルを上回るとみられる。投資の多くがマイクロンやWDなどの半導体チップを搭載した製品に充てられるという。

半導体メーカーの中でも“勝ち組”とみられるのは、画像処理半導体(GPU)メーカーのエヌビディアだ。GPUは演算処理能力の高さからゲーム用チップとして使われていたが、人工知能(AI)の隆盛で深層学習(ディープラーニング)の処理に利用されている。エヌビディアがこのほど発表した2018年2〜4月期(第1四半期)決算では、データセンター部門の売上高が前年同期比71%増の7億100万ドルと急増した。

クラウド向け急増

インテルのデータセンター部門も好調だ。クラウドプロバイダー向けの売上高は同45%増に急増。電気通信事業者向けと合わせると、データセンター部門の売上高の6割を占めた。データセンターのサーバー向けプロセッサー市場シェアは99%と寡占状態の同社は、クラウド向け半導体需要の急増による最大の恩恵を受けてきた。

ただ、半導体メーカーの業績の伸びについて先行きに警鐘を鳴らす向きもある。サスケハナ・ファイナンシャル・グループのアナリスト、メフディ・ホセイニ氏は「ハイテク企業が過度なインフラ投資を行えば、これまでチップ需要を押し上げてきたクラウドプロバイダーからの注文が突然、減少する可能性もある。半導体メーカーの勢いが急速に衰えかねない」と危惧する。(ブルームバーグ Jeran Wittenstein、Ian King)
2018.5.26 06:05
https://www.sankeibiz.jp/macro/news/180526/mcb1805260500002-n1.htm