ドイツの自動車大手ダイムラーの高級車ブランド「メルセデス・ベンツ」が高級電気自動車(EV)で米EV大手テスラのセダン「モデルS」に戦いを挑む。自動車の電動化の潮流に乗って高級EVの需要を取り込む考えだ。

ダイムラーのツェッチェ最高経営責任者(CEO)は、メルセデス部門が2022年までに10種類のEVを投入する計画の一環として、フラッグシップのセダン「Sクラス」とほぼ同じ大きさの新型フルサイズセダン「EQ S」の開発を進めていることを明らかにした。

同CEOは、EV専門ブランド「EQ」が、今とは全く別物のバッテリーを提供するプラグインハイブリッド車(PHV)と並んで電動車のラインアップに加わると同時に、従来の内燃ガソリン車については、システムの電圧を従来の12ボルトから48ボルトに高めて高効率化を図った「48ボルトマイルドハイブリッド」システム搭載に転換するとし、「すべてのクルマが電動化する」と強調した。

また、コンパクトカーのラインアップを現在の5種類から8種類に拡大するのに伴い、「販売台数が大幅に増える」可能性があるとの見方を示した。クロスオーバーのスポーツ用多目的車(SUV)、「GLA」や「CLA」クーペなど小型で手頃な価格のモデル追加がライバル会社から若年層の顧客を取り込むのに寄与しており、新型「Aクラス」ハッチバックの投入でこの傾向が続くと見込む。

メルセデスは昨年、独BMWの「BMW」ブランドやフォルクスワーゲン(VW)のアウディブランドを抑えて高級車販売世界トップの座を守るとともに、販売台数、利益ともに過去最高を記録した。だがバッテリー車、デジタル新製品の開発コストが高騰した上、メルセデスの2大市場である米国と中国で貿易障壁が設けられれば、利ざやの重しとなる恐れがある。

ツェッチェCEOは「一般的に世界は不安定さを増しており、われわれは現地生産の柔軟性を高める必要がある」としつつ、通商障壁から生じる政治リスクについてコメントするには時期尚早との考えを改めて示した。

一方、中国が海外メーカーに課している合弁会社の出資制限を緩和する可能性を示唆したことについては、「さらなるチャンスを歓迎するのは言うまでもない。提携相手である北京汽車(BAIC)とは非常に良好な関係にあり、(出資比率を)変えないとの結論に達する可能性はある。だが、当然ながら選択肢は少ないより多い方がよい」と話した。中国政府が自動車メーカーにEVの販売割り当て(クオーター制)を適用する方針について、ツェッチェCEOは同社が基準を満たすと自信を示した。(ブルームバーグ Christoph Rauwald)
2018.5.24 06:03
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