日本経済新聞 2018/5/20 4:23
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO30740300Q8A520C1000000/

 【ワシントン=河浪武史】米中両国は19日、ワシントンで17〜18日に開いた貿易協議の共同声明を発表して
「米国の対中貿易赤字を減らすため、中国が米国のモノとサービスの輸入を大幅に増やすことで合意した」
と表明した。貿易不均衡の是正で一歩前進したが、米国が検討する対中制裁の撤回には触れておらず、
両国は「高いレベルで引き続き貿易問題の解決策を探る」としている。

 共同声明の発表は協議終了から異例の1日遅れとなった。トランプ米政権は知的財産権の侵害を理由に、
500億ドル分の中国製品に追加関税を課す対中制裁案を公表しており、両国が解決策を探っている。
2回目の貿易協議となった17〜18日の会合では(1)米国の対中貿易赤字の解消(2)中国通信機器大手への制裁緩和
(3)次世代産業を巡る中国の補助金政策の見直し――が焦点だった。

 協議では米中両国が貿易不均衡を解消することで一致し、共同声明に「中国が米国から農産品や
エネルギーの輸入を大幅に増やすことで合意した」と盛り込んだ。両国は具体策を取りまとめるため、
米国が中国に代表団を派遣して再協議する。米国側は年3750億ドルある対中貿易赤字を2000億ドル分
減らすよう中国に求めてきたが、共同声明では数値目標などには触れなかった。

 共同声明では両国の見解として「知的財産権の保護は重要だ」とも付記した。米国は中国側が
自国産業育成のために米企業に技術移転を強要していると批判し、対中制裁の表明に踏み切った。
中国は19日の共同声明で、特許法も含めて法規制を改正していく意向を表明した。

 習近平(シー・ジンピン)国家主席が自ら求めた通信機器大手、中興通訊(ZTE)の制裁問題には
触れなかった。米商務省はイランや北朝鮮への不正輸出問題に絡んでZTEに制裁を発動。同社は
基幹部材の調達が困難になって、スマートフォンの販売を停止するなど経営危機に陥っている。
トランプ大統領は制裁緩和も示唆しており、両国は水面下で引き続き解決策を探っている。

 米国側は中国の産業育成策「中国製造2025」計画の見直しも求めてきたが、共同声明では中国側の
取り組みについて一切言及しなかった。同計画はロボットなど先端技術の国産化を目指すもので、
中国当局はハイテク産業に巨額の補助金を投じている。米国は補助金廃止など同計画の事実上の撤回を
要求しているが、中国側は強く反発しており、協議では平行線に終わったもようだ。

 米政権は「協議が不調なら中国製品に追加関税を課す」(ロス商務長官)としてきたが、
共同声明では早期の制裁発動には触れなかった。米国は制裁撤回も表明していないが、
引き続き協議を継続して妥協点を探る見込みだ。世界経済には引き続き米中両国の「貿易戦争」の
懸念が残っている。