日本経済新聞 2018/5/15 13:34
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO30517390V10C18A5000000/
記者会見に臨む東芝の車谷暢昭会長(左)と綱川智社長(15日午後、東京都港区)
https://www.nikkei.com/content/pic/20180515/96958A9F889DE1E2E7E3E5E1EBE2E3E7E2E7E0E2E3EAE2E2E2E2E2E2-DSXMZO3052281015052018EA2001-PB1-4.jpg
(東芝メモリ売却の流れ)
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 東芝が15日に発表した2018年3月期決算。売却を予定しているメモリー事業は好調で、
営業利益は前年度比2.6倍の4791億円となった。一方、売却を巡る中国の独禁法審査の最終期限が
28日に迫っているが承認が下りるかはなお不透明。審査が通らない場合は売却をやめ
新規株式公開(IPO)の可能性も探る。いずれにせよメモリー相場は下落傾向が続いており、
事業価値を維持したい東芝と時間との戦いとなる。


■中国当局、審査長引く

 東芝は15日、半導体子会社「東芝メモリ」の株式を米投資ファンドなどに売却する計画について
「売却方針に変更はない」と表明した。17年9月に総額2兆円で米投資ファンドのベインキャピタルや
韓国SKハイニックスなど「日米韓」連合に売却する契約を結んだ。2期連続の債務超過による
上場廃止を回避するためだった。

 中国当局による独禁法審査は17年12月上旬に始まり、18年3月末までの完了を見込んでいたが、
まだ結論は出ていない。関係者は「中国当局から具体的な注文は一切ついていない」と話す。

 売却先が米企業ということもあり、判断に米中摩擦の影響が出ているとの見方がある。東芝社内では、
韓国のハイニックスが買い手に入っているため中国政府が日韓大手の連携を嫌がっている、との観測がある。


■今後の3つのシナリオ

 東芝は決算発表で19年3月期の純利益見通しは前期比33%増の1兆700億円とした。メモリー事業の
売却益9700億円を見込んでいる。だが売却益計上は中国当局の承認が下りることが前提だ。

 中国当局の独禁法審査の最終期限は5月28日。通常は審査の最終期限の延長はない。今後考えられるのは
(1)売却(2)特例の審査延長・再申請(3)IPO――の3つのシナリオだ。

 ▼売却益でソフト開発強化 仮に予定通り中国当局が28日までに売却を承認した場合、東芝は売却益を
重点分野に投資していく。電池、自動車部品、インフラ事業などが対象となる見通し。
各事業でデータ分析などのソフト開発を強化していく方針だ。東芝は28日の期限まではあくまで契約通り
売却を目指す。

 ▼再申請「可能性は低い」 ただ、特例として中国当局が期間を延長するか、再申請を求めることもありうる。
その場合、ベインと東芝で協議に入り、審査が期限内に通過しなかった理由を分析する。
短期間で解決できそうなら売却方針は変えない見通し。東芝は4月1日に契約解除権を持ったが、
契約上、売却を中止するにはベインの合意が必要になる。中止を強行すれば訴訟を起こされる可能性がある。

 審査がすぐに終わる見通しが立たない場合は両社合意の下で売却を中止する可能性が高い。
承認が得られていない理由は現時点で不透明なままだ。現状では仮に申請を続けても承認のメドは立たない。
審査手続き中は事業が塩漬け状態になるため、長引けば事業の価値が下がるだけ。
ベイン・東芝双方に利点は薄い。関係者は「再申請の可能性は低い」と語る。

 ▼IPO、市況変化にリスク 売却を中止した場合、IPOに打って出るのが有力だ。経営危機にあった
東芝を支援してきた金融機関は半導体事業で生き残るための巨額の投資余力は東芝にはないとみている。
増資などでつなぐ選択肢もあるが、大規模な資金調達を狙いIPO手続きに入る公算が大きい。

 上場手続きには通常、1年程度はかかる。最大のリスクは市況だ。東芝メモリが手掛けるNAND型
フラッシュメモリーの価格はスマホ市場の低迷を受け下落傾向にある。コンプライアンス体制などの不備で
上場審査が長引けば、調達できる金額が目減りするリスクもある。

(兼松雄一郎)


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YOMIURI ONLINE 2018年05月15日 13時49分
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