JAPAN style 訪日ビジネスアイ 2018/05/09
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 限定品の人形100体が、たった1人に買い占められた-。3月末に京都高島屋(京都市下京区)で起きた
トラブルが物議を醸している。その後、人形はインターネットの通販サイトに通常より高い価格で
売りに出されたことから、転売目的で購入された可能性が高い。こうした限定商品などが買い占められ、
ネット上で高値で転売される事案は、ジャンルを問わず後を絶たない。販売側も抽選にするなど
対策を取っているが抜本的な解決は難しい状況だ。(南里咲)


1人が1200万円分

 問題を振り返ってみる。買い占められたのは、人気画家として知られる故中原淳一氏の絵を再現した
「ロリーナ」という名前の人形(高さ64センチ)。赤いスカート姿で花束を手にするポニーテールの少女で、
樹脂素材を使った「スーパードルフィー」と呼ばれる精巧な作りが特徴だ。1体12万4200円と高価だが、
世界的にもマニアの間では非常に人気だという。

 京都高島屋で100体限定で受注販売を受け付けた3月31日、開店前から約200人の行列ができ、
1人2体までに制限して先着50人に整理券を配布した。

 その後、店内の複数のカウンターで販売手続きを進めたが、整理券を受け取った人がカウンターに来るたびに、
最初に購入した男性客が次々と「この人の分も私が払う」と言い、結局50人分の代金(計1200万円以上)を1人で支払った。
並んだ客は全員この男性の関係者だったとみられ、人形の配達先の住所は全て同じだったという。

 その後、中国の通販サイトにはロリーナの写真とともに「京都高島屋限定」との販売情報が掲載された。
ネット上では「転売目的だ」との指摘が相次いだが、京都高島屋は「転売目的かどうかは確認できない。
契約も成立してしまっている」として、予定通り5月に引き渡す方針だ。


Tシャツやゲームでも

 こうした事態を受け、5月中旬にロリーナを販売予定の日本橋高島屋(東京)は販売方法を先着順から抽選に見直した。
販売数も1人1体に限定するほか、同じ住所への配送は1体までとし、支払いも代引きのみとする。広報担当者は
「いただいた多数の意見を真摯(しんし)に受け止め、販売体制を変更した」と話す。

 京都高島屋のケースについて、転売問題に詳しい福井健策弁護士(第二東京弁護士会)は「購入数の制限があるのに
特定の人物が買い占める行為は、販売側が示した条件に違反している。店をだまして購入したとして詐欺罪や
業務妨害罪に問われる可能性もある」と指摘する。

 最近では百貨店などの限定品だけでなく、音楽コンサートのチケットや人気ゲーム機なども買い占めの対象となっており、
ネット上で高値で転売されるケースが後を絶たない。ネット上では、「転売屋」から派生して「転売ヤー」という
スラングも生まれているほど、悪質な買い占め、ネットでの転売は身近な問題になっている。

(中略)

問われる販売側の覚悟

 販売側も黙ってはいない。2020年東京五輪・パラリンピックの大会組織委員会は、入場券の高額転売を防ぐため、
入場券を名前入りにしたり、個人情報を登録した電子チケットを一部導入したりする方針を表明した。

 大阪市のテーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)」の運営会社ユー・エス・ジェイはすでに、
オークションサイトなどでの転売を確認したチケットは無効にしているほか、購入者のスマートフォンに
電子チケットを配信することで、転売しにくくする仕組みを導入している。

 一方で、転売目的かどうかの見極めが困難というケースも。大丸京都店(京都市下京区)は希少性の高い商品は
1人あたりの購入数を制限しているが、「個人でまとめ買いするお客もおり、転売目的かどうか判断が難しい」と
頭を悩ませている。

 一般的な転売について、福井弁護士は「安く仕入れて高く売るのが市場経済の大原則。取引自体は自由なので法規制は難しい」
と語る。その上で「大事なのは販売側の姿勢。購入数制限などの販売条件を徹底し、条件違反する客がいれば
『おかしい』と現場で制止するような対応が必要だ」と大量購入に「待った」をかけ、未然に転売を防ぐべきだと話した。

(全文は記事元参照)