総務省は9日、楽天を携帯電話事業者として正式に認可した。新規事業者の参入は、イー・アクセス(現ソフトバンク)以来13年ぶり。NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクに次ぐ「第4の携帯電話事業者」として2019年10月にサービスを始める計画だ。ただ開設計画に対して同省は実効性に疑問が残るとして、異例の条件付きの認可となった。

 9日午後6時に同省で開いた認可式で、野田聖子総務相は「電波は国民共有の資源、有効利用に期待する」と要請。三木谷浩史会長兼社長は高揚した様子だったが、無言で認可状を受け取った。

 楽天は現行の通信規格である「4G」の周波数帯「1.7ギガ(ギガは10億)ヘルツ」を取得した。これまでは大手から電波を借り受けてサービスを展開する格安スマホ業者だったが、自前で電波を持つことで大手に近い品質を提供できるようになる。

 楽天の強みは電子商取引(EC)で買い物をする人など9000万人の会員基盤だ。大手よりも3割程度安いプランを提示し、乗り換えを促す。クレジットカードのポイントなどと連携させれば、さらに通信料を下げることもできる。ある幹部は「300〜400万人程度で事業の黒字化は確保できる」と見積もる。

 「携帯電話事業は後発が有利」と三木谷氏が語るように、現在の基地局機器はランドセルサイズほどに小型化しており、設置場所の確保や作業も以前より簡単になっている。楽天は人工知能(AI)を駆使するほか、電力会社の鉄塔をアンテナ用に活用するなどして全国をカバーする計画だ。

 設備を作れたとしてもメンテナンスやサービス、通話品質の維持の方がむしろ肝心だ。総務省の電波監理審議会も「基地局の設置場所の確保や工事業者との協力体制の構築に努める」「必要な技術要員を確保して配置する」など、4項目の注文をわざわざつけた。通話品質を維持できなければ顧客は逃げるだけだ。携帯事業者へ向けた準備はこれからが正念場となる。
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